●「もののけ姫」ニュースクリップ:6
news clip of "The Princess Mononoke"

1997年7月下旬
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1997年7月29日 日本経済新聞 夕刊


もののけ姫 触覚を刺激する「いい男」(二宮和子)

 「宮崎アニメ」と称される一連の作品の中では「天空の城ラピュタ」が一番好きだった。宮崎駿の最新作「もののけ姫」を見ることでその理由がわかった。「ラピュタ」の場合、主人公のパズーが「いい男」だった。だから好きだったのだ。当時の私は学生だったが、パズーを見て「いい子だよ」とつぶやくドーラ婆さんと既に気分は同様だったのだ。

 が、同時に一子供を使ったお話ならばこういう夢を見ることもできるのだけれど」というあきらめを感じていたことも事実である。そう、あきらめていたのだ、パズーが素敵に成長した姿を見ることなどできはしないんだろうな、と。しかし「もののけ姫」を見た今、これは私の勝手な思い込みだったことがわかった。主人公のアシタカがものすごく「いい男」だったからだ。

 「ラピュタ」の時点では、悪しき存在を破滅させるため、少女と手を重ねて呪文を叫ぶまだ幼い男の子しかスクリーンに登場してはくれなかった。が、人と森を破滅から救うため、少女の体を抱き支えながら神に言葉をささげるりりしい若者が登場してくれる時代がついに来たのだ。こういうことを書いたりすると「人と自然の共生は可能か否かという気宇壮大なテーマの映画をたかが男と女の話扱いするなんて」といった類の非難が飛んできそうだ。

 が、私はあえてぬけぬけと書きたい。アシタカがいい男だから「もののけ姫」は傑作なのだ、と。アニメの魅力とは、表現が純化される点にある。サンがアシタカに口うつしで食べさせる場面、一瞬アシタカの手がびくっとする。これがいい。これを生身の人間が演じても素敵でもなんでもない。「絵を動かしたい」という作り手のメンタリティとは別個に、観客がアニメという形態を受け入れる理由の中には、こういった心地よさを味わいたいという気分も合まれているのだ。

 男は視覚で感じ女は触覚で感じる、よく言われることだが女の触覚を刺激し、満足させてくれるメデイアはなかなか見当たらない。しかし「もののけ姫」は違う。娘の体を抱く、アシタカという若い男の体温だのたくましさだのがよくわかる。女ならぜひ見てほしい。(女子供文化評論家)(当該記事より)







1997年7月29日 日経産業新聞


もののけ姫 16日で260万人動員

 「目指すは『E・T・』以上の配給収入」−。東宝の石田敏彦社長と徳間書店の徳間康快社長は二十八日、都内のホテルで会見し、アニメーション映画「もののけ姫」の好調ぶりを報告した。十二日の公開以来、六日間で観客動員は百万人を超し、二十七日までの公開十六日間で二百六十万人に達したという。東宝の配給作品としでは最高記録で、石田社長は「上映館を増やし、九月上旬で八百万人の動員を見込む」と話している。

 「もののけ姫」は現在、東宝洋画系と呼ばれる映画館二百三十七館で上映している。これまで東宝配給作品で最高の配収を記録した子猫物語(八六年、五十四億円)の場合、百万人突破に八日間、二百万人突破に十五日間かかっており、「もののけ姫」はこれを上回るペースで観客を勤員している。

 通常の映画と比べると、「もののけ姫」は東京・大阪などの九大都市のほか、地方都市での客足が伸びているのが特徴。映画館の売り上げに当たる興行収入の内訳で見ると、地方都市が六割以上に達している。石田社長は「パンフレットやグッズなどの売り上げだけで十六億円に達する」と話し、好調ぶりをアピールした。

 「もののけ姫」の製作総指揮を務めた徳間社長は「『E・T・』の配収九十六億円をいかに抜くかが課題」と強調。また、米ウォルト・ディズニー配給による全米公開を目指し、このほど英語の字幕スーパー版が完成したことを明らかにした。(当該記事より)







1997年7月29日 日刊スポーツ


もののけ姫 邦画日本新確実 制作徳間社長が引退撤回代弁

 公開中のアニメ映画「もののけ姫」(宮崎駿監督、東宝配給)の配収が、「南極物語」(1983年公開)の持つ日本映画最高記録の59億円を突破することが確実になった。28日、東宝が明らかにした。同映画は公開16日間で260万人を動員。配収54億円を記録した同社配給の「子猫物語」(86年)が同期問で235万人だったことから、東宝では夏休み中にも60億円実破を見込んでいる。

 都内で会見した東宝・石田敏彦社長と製作の徳間書店・徳間康快社長がほえた。石田社長が「"南極物語"の持つ配収の日本最高記録を突破するメドがつきました」と言えば、徳間社長も「日本映画はとっくに迫い越すつもりだった。名実ともに国民映画になりつつある。あくまでも目標は(配収96億円の)"E・T・"ですす」と豪語した。

 日本映画最大規模の全国約240館で公開中だが、一週間当たりの動員数で、全国98館の劇場が新記録を達成するなどさまざまな記録を塗り替えている・特に地方劇場で強く、総動員数の7割を占めている。上映館数も今後300館以上に増やすことが決まっている。12日に公開されたばかりだが、16日後にあたる28日現在で約260万人を突破した。「南極物語」や、現在、配収記録第2位の「子猫物語」は同期間で約235万人の動員で、「もののけ姫」はこれを25万人も上回っている。

 東宝は、8月下旬には「南極物語」の記録を抜き去り、9月上旬には800万人に達するとみている。勢いは日本だけではとどまらない。同映画はディズニーとの提携で米、仏、独、伊などの世界公開も決まっている。徳間社長は「日本大使館を通じてクリントン大統領夫妻にも見てもらうように働きかけている」と胸を張る。

 この大ヒットで製作側にも大きな変化があったた。同映画での引退をほのめかしていた宮崎監督は会見には姿を見せなかったが、徳間社長は「(引退は)全然ございません」と、宮崎監督に代わって撤回宣言。今後、宮崎監督は総括的な立場で企画、題材、シナリオなど作品にかかわっていき、新人育成にも乗り出すという。(当該記事より)







1997年7月29日 報知新聞


「もののけ姫」封切り16日間で260万人動員

 12日公開された日米の"モンスター映画"「もののけ姫」(宮崎駿監督、東宝配給)と「ロスト・ワールド」(スティーブン・スピルバーグ監督、UIP配給)が、ともに映画史上最高の出足を見せていることが分かった。28日、束京・内幸町の帝国ホテルで「大ヒット報告会」を開いた「もののけ姫」は、公開16日間で観客260万人を動員。「ロスト・ワールドは29日にも300万人突破と、両作品とも「E・T」(82年)の持つヒット記録の更新が見えてきた。

 「もののけ姫」は12日の初日からスタート一週間で110万人、翌週も110万人と勢いの全く落ちない観客動員を見せ、28日までに260万人のファンを呼び寄せた。公開16日間の動員としては「子猫物語」(86年、邦画歴代2位の配収54億円)の235万人を大きく上回り、上映館も全国237館から今後300館に拡大するため、前代未聞の数字の可能性も出てきた。

 「9月上旬までに800万人を動員し、興行収入(入場券売り上げ)で111億円は行くでしょう。配給収入(興収から手数料を引いだ額)で66億円以上が見えましたね」と景気のいい数字を並べるのは「大ヒット報告会」に出席した石田敏彦東宝社長。公開時点では「南極物語」(83年)が持つ邦画の配収記録59億5000万円の更新なるかが焦点だっだが、驚異的なヒットに目標も上方修整だ。

 同席したエグゼクティブプロデューサーの徳間康快徳間書店社長は「南極物語の記録など歯牙にもかけていない。『E・T・』に迫るか抜くかヽこれが勝負です」と、さらに上方修整。「E・T・」(82年)の持つ日本公開映画の配収記録96 億円を目標として掲げたうえ、「世間で言われている宮崎監督の引退はデマ。今後も総監督として作品に参加してもらいます」と宮崎監督の引退撤回宣言まで出た。

 パンフレット(600円)の売り上げも史上最速で170万部(売り上げ10億円)に達するなど、グッズ売り上げも16億円を突破。「最高の国民的映画(徳間社長)になりつつあるのは間違いない。

来年3月に全米公開
 「もののけ姫」は、すでに年内の台湾、香港両国での公開が内定。8月5日に提携先のディズニー幹部が試写を見る運びの米国でも来年3月の全米公開が内定。クリントン大統領夫妻用に特別試写会も予定されている。英語吹き替え版の声優についても選定中。徳間社長は「わたしはケビン・コスナーがいいと推薦しているんだけど」。(当該記事より)







1997年7月29日 サンケイスポーツ


邦画の歴史を変える驚異の観客動員ペース

 アニメ映画「もののけ姫」が公開16日間で観客動員260万人に達し、邦画史上最高の動員ペースを記録していることが28日、明らかになった。製作・配給側は配収目標を、当初の60億円から、15年前に「E・T・」が記録した96億円に上方修正。「もののけ姫」と同日公開の洋画「ロスト・ワールド」も計300万人動員を目前にしており、映画界は活況に沸いている。

 日本映画史を塗り替える大ヒットだ。12日に封切られてから27日まで全国237 の上映館の来場者が計260万人に達した。配給元の東宝によると、同社配給の最高記録作品「子猫物語」が16日間でマークした235万人を上回るハイペースで「日本映画の最高記録樹立は確実」だという。邦画の史上最高配収作品は「南極物語」の96億5000万円。記者会見の席上、東宝・石田敏彦社長は「目標としてきた60 億円はおろか、もっと伸びる」と断言、製作総指揮の徳間書店・徳間康快社長は「邦画記録は歯牙にもかけない。(洋画最高の)『E‐T・』の96億円をいかに抜くかが勝負だ」と豪語した。

 アニメの帝王、宮崎駿氏による5年ぶりの監督作品で、同氏の引退作とも喧伝されたことから人気が爆発。23億円という製作費、13万8000枚ものキメ細かな作画、室町時代を舞台に繰り広げられる自然と人間との戦いと愛を描いたストーリーの評判が子供や女性の間をロコミで伝わり、夏休みも重なっで記録的な動員となった。東宝では「子猫物語」の750万人を上回る動員数800万人を見込み、上映館を300に増やすことを検討中。さらに、劇場パンフレット170万部で約10億円分を売り上げ、他のグッズと合わせると計16億円の収入となるなど、関連収益も莫大だという。

 「冬の時代」が叫ばれる日本映画界にあって、社会現象を巻き起こした失楽園」(森田芳光監督)、力ンヌ映画祭グランプリを受賞した「うなぎ」(今村昌平監督)に続く、記録的話題作の登場。邦画界の息を吹き返させる活況を現出した徳間社長は、「名実ともに最高の国民映画になりつつある」と胸を張った。

"もののけ旋風 世界へはばたく"
 「もののけ姫」は、米ウォルトディズニーとの提携で来春に欧米公開を予定、台湾などアジア各国でも上映が決定している。「英語版の声優としてケビン・コスナーを推薦中。クリントン大統領夫妻にも試写していただけるよう交渉する」と徳間氏。"もののけ旋風"は世界を席巻する。(当該記事より)







1997年7月28日 信濃毎日新聞


もうちょっと生きてみよう

 新作の「もののけ姫」の主人公の少年の運命は、今の子どもたぢの運命だと、僕は思ってます。両親の愛情や経済的には恵まれているはずなのに、もっと根本のところで、地球がどうなるのかという不安を、子どもたちは体で受け止めています。意識の下で通奏低音のように、不安がいつも鳴り続けているのです。物語の結末は完成するまで見えませんでした。でも、やりたいというよりも、やらねばならないこと、という思いが強かった。

 現代に生きていて、感じませんか。殺さなければならない…。生態系に乗っかっている以上、あらゆる生命が生命を奪うことによって生きているんですから。「自然と共存する」と言う人ほどうさんくさいんです。例えば、長野の山々の自然を守れ、といっても、その自然は、人間がいなければ決してこういうふうになるはずがなかった森の姿ですよね。人間が「自然」という時は本来そこにあったもの」という意味ではなくて人間以外の生き物」ということでしよう。

 それに、「生き物」と言う時、人間は「蚊は要らない」「ミミズは気持ち悪い」と、ものすごくごう慢に判断しているのです。前作の「耳をすまぜば」のように、少年と少女が健やかで元気に明るく出掛けていこう、という話も好きです。でも、同時に人間たちが心の底に、この地球や世界がどうなっていくか不安を持っていて、さらに、実は生命として持たざるを得ない暗がりとやみの部分を持っている。その足元の穴の存在を、はっきり大人が子どもに向かってどこかで語る必要があったんです。自分が、健やかに明るく生さよう−という映画を作りすぎたせいもあると思いますけど。

 90年代に入って、自分が若い時に考えたことや正しいと思ったことが浅はかだったと思い知らされました。例えばボスニア・へルツェゴビナで、セルビア人が悪いんだ、と言ってしまえば簡単です。でも、セルビア人もクロアチア人も、互いに残虐行為をやっているんです。そういう時、自分はどこの場所に立つのだろう、と。二十世紀はイデオロギーの実験場でした。正しい、正しくない、で対立が起きた。二十一世紀は、どっちも正しくない、という時代に生きるんです。その時、何を自分の核に据えるのか。憎むとか否定するだけでは済まない。それと、人間が生態系の中の一員であるという中で新たに発生してくる問題。この双方の中で生きる、そういう時代に居合わせているのです。

 全部をヒユーマニズムというあいまいな言葉の中でもやもやさせても、子どもたち自身が、世界はそんなことで動いているんじゃないということを知っている。それに対して、大人として、それでも言うに値することは何だ−としたら、ぼく自身はもう死に向かって生きていく時期に来ていますが、生きるのはしんどいけど人生は生きるに値するんだ、ということではないですか。

 「生きる」とう時、暗がりも業(ごう)もやみも、しかも、困難も苦しみもつらいことも全部持っている。それを削り落としたのが良い生き方、なんてうそ。苦しみの部分も暗がりの部分もきちんと味わいながら、光の部分も十分受けて生きることが一番いい、それができるんだ、ということは、伝えるに値するんじやないか。

 子どもたちは受け止めてくれるだろうと思ってます。少なくとも、こうした方が得する、とか、損する、と教える大人よりは、信用してくれるでしよう。この世界というのは、美しいと思うんです。そんなことを口に出すのは恥ずかしいですけどね。木の上を飛ぶことはできませんけど、この上をもし、自分が昆虫になって飛んでみたら、どういう世界が見えるかって考えるだけでもそう感じる。目の下数十センチの水の中にも広大な世界があるんです。そういう風景に出会うと、もうちょっと生きてみようという気になります。(当該記事より)記事提供:星切正人氏







1997年7月25日 山形新聞 夕刊


「もののけ姫」娯楽の要素と社会性がマッチ

 世界配給も決まっている宮崎駿監督のアニメーション映画(東宝配給)。日本の室町期を舞台に、森の神々と人間の戦いを描く。アニメだからこそ描き得た総大喝壮絶な物語だ。山形市のシネマ座・スカラ座などで公開中。

 中世から近世へと移行するこの時期、人間は太古の森を盛んに切り開き始めた。豊かな暮らしを製鉄に求め、その燃料を手に入れるためだ。聖域を侵された山犬、シカなどの獣たちは人間を襲い、荒ぶる神々として恐れられていたが、ついに人間は神々を一掃するため総攻撃をかける。

 冒頭、いきなり炎のような触手に全身を覆われたタタリ神が登場する。この紙を倒して氏の呪いをかけられた王家の青年が呪いのなぞを解くため旅に出る。そして神々と人間の戦いに巻き込まれるのだが、どちらにつけばいいのか最後まで悩む。

 冒険活劇というエンターテインメントの要素、さらに正義の理不尽さといった社会性も合わさって上映時間2時間15分といった長さを感じさせない。

 一方で日本的な要素がたっぷりの映画なので世界公開に耐えうるかという疑問もよぎるが、森の神々と人間の戦いはほかの国でもあったはず。宮崎駿の作品は海外でも大人にファンが多いので、反響に興味がある。

 「日本人は殺しすぎる。いけすの魚を目の前で殺して食べる」など、筆者とのインタビューで宮崎駿監督の口からは日本民俗批判が相次いで飛び出した。

 あふれんばかりの熱い思いを「もののけ姫」に注いだようだが、それをニコニコ、ユーモアたっぷりに語るのを見ているうちに、「トトロ」は鏡に映る自分の額をヒントに創作したのではと思えてきた。(当該記事より抜粋)・記事提供:高橋耕一氏







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