1997年9月29日 朝日新聞 夕刊 ひと前線
「もののけ姫」追い風に 米良美一
映画「もののけ姫」の主題歌で、一躍、時の人に。「クラシックに無縁の人たちにもカウンターテナーを知っでもらえてラッキーでした。ようやくスタートライン、という気持ちです」
二十六歳。大学時代からカウンターテナー(男性アルト)として、バッハの宗教曲、バロックオペラから日本の唱歌や黒人霊歌まで歌ってきた。
クラシック界では異端児扱いもされるが、「何を歌っても、ソウルフルな歌という私のテーマは変わらない」と、マイペースを通してきた。「もののけ姫」を追い風に、マイナーからメジャーに転じつつある。最新アルバム「ロマンス」(キング)では、「オンブラ・マイ・フーなど名曲を、オーケストラをバックに歌った。「ミーハーだから、名曲大好き。でも、バッハだけはずっと歌わなければと思う。難しいし、抑制されたスタイルに反発もするんだけど…。やっぱり、僕の音楽のよりどころ」(当該記事より)
1997年9月22日 毎日新聞 週間新聞 ニュースのまとめ
15日で入場者が1000万人を突破した宮崎駿監督のアニメ映画「もののけ姫」。すでに邦画では最高記録を更新中の配給収入も83億1600万円に達し、歴代2位の「ジュラシック・パーク」(83億円=1993年)を抜き、1位の「E・T・」(96億円=82年)に迫る勢い。(当該記事より)
1997年9月17日 東京中日スポーツ新聞
「もののけ姫」1000万人突破 『社会還元を』
宮崎駿アニメ映画「もののけ姫」の観客数が十五日までに一千万人を超え配給収入も米映画「ジュラシック・パーク」を抜く新記録になったと十六日、配給の東宝が発表した。
製作総指揮で徳間グルーブの徳間康快社長は同日、「観客動員千二百五十万人、配収百億円を」と日本映画興行史上の最高記録達成に自信をみせ、「配収からアニメ映画普及のための『もののけ姫基金』設立など何か社会還元することを検討している」と語った。
東宝の発表によると封切りの七月十二日から九月十五日までの六十六日間の観客数は一千十三万七千九百三十五人、配収は八十三億一千六百万円。配収五十九億円の邦画記録「南極物語」(昭和58年)をすでに抜き、四年前の「ジュラシック・パーク」の一千万人、配収八十二億円を上回った。日本映画映画興行史上の最高記録は一千百万人、配収九十六億円の米映画「E・T・」。これも射程距離に入り、十一月には抜いて、最高記録を達成できそう。
徳間社長は「観客の皆さんに感謝する意味で配収の中から、社会還元することを検討している」と語った。「もののけ姫」は業務提携している米ディズニーと欧米の上映権について商談中だが、声の吹き替えに米俳優ケヴィン・コスナー(42)に出演依頼の手紙を出したことも明らかにした。(当該記事より)
1997年9月15日 サンケイスポーツ新聞
「もののけ姫」動員1000万人突破 今日にも大台到達!!
きょう"大台"だ。アニメ映画「もののけ姫」(宮崎駿監督)の観客動員数がきょう15日に1000万人を突破することが確実となった。同時に、配給収入でも「ジュラシック・パーク」(93年公開)の83億円を抜き、「E・T・」(82年)の96億円に次いで歴代2位となる見通しだ。
配給元の東宝のまとめによると、同作品は7月12日の公開から今月11日までの二ヶ月間で観客数が965万人に達し、12〜14日の動員数を加算すると990万人を突破。今週中に「ジュラシック〜」の1050万人を抜く可能性も出てきた(歴代トップは「「E・T・」の1200万人)。
製作総指揮の徳間書店・徳間康快社長は「当初は邦画最高の『南極物語』(83年)を超える配収60億円を目指してきたが、その後『ジュラシック』の83億円に修正した。これをクリアしたからには「E・T・」の96億円をいかに抜くかが勝負だ」と語っている。(当該記事より)
1997年9月14日 読売新聞
「もののけ姫」観客1000万人突破へ
日本人の十二人に一人が見た−。
大ヒットを続けているアニメ映画「もののけ姫」(宮崎駿監督)の観客数が、きょう十四日にも一千万人の大台に乗ることが十三日、配給元・東宝のまとめで分かった。配給収入でも、スティーブン・スピルバ一グ監督「ジュラシック・パーク」(1993年)の八十三億円を抜き、同監督「「E・T・」(82年)の九十六億円に次いで、歴代二位となる見通しだ。
「もののけ姫」は七月十二日に封切られ、今月十一日までの観客数は九百六十五万人、配収は八十億円に達した。この三連休で約四十万人の観客動員が見込まれ、連休中の一千万人突破は確実となった。観客数では、児童、生徒が課外授業などで見た市川崑監督「東京オリンピック」(65年)の約千五百万人を除けば、邦画では最多。(当該記事より)
1997年9月14日 日刊スポーツ新聞
「もののけ」のカット許さん おののき知らない徳間社長 ディズニーに気炎
邦画史上最大のヒットとなった「もののけ姫」の世界公開に際し、製作した徳間書店・徳間康快社長(74)が配給を担当するディズニー社にノーカット上映を要求していることが13日、分かった。「もののけ姫」には、腕が切られて飛ぶなどの過激なシーシが含まれており、米国などの規定でカットは必至とみられていた。徳間社長は「作品の質を保つために、1分たりともカットは認めない」と気炎を上げている。
徳間書店は昨年夏、米国最大の総合娯楽企業であるウォルト・ディズニー社と、宮崎アニメの世界配給契約を結んだ。宮崎アニメばこれまで「となりのトトロ」などが世界数カ国で公開されたが、この契約によよってディズニーの持つ強力な配給網に乗って、宮崎アニメが全世界で封切られることになった。
その第1弾が「もののけ姫」で来年3月に米国、欧州などで公開される。同書店の徳間社長は「もののけ姫」の世界公開に際し、「作品の質を保つために、1 分たりともカットを認めない」どディズニー社に対し、強硬に要求を出していることが明らかになつた。「もののけ姫」の上映時間は2時問13分と長く、また劇中には弓矢で射られて腕が飛ぶシーンなど過激なシーンが数カ所含まれている。暴力描写に厳しい米国、欧州などではカットの可能性が高かった。
徳間社長の要求には背景がある。現在、同社長が製作した「Shall we ダンス?」(周防正行監督)が全米で公開されてヒットしているが、上映の回転率を高めるなどの理由で約2時間の上映時間の15分ほどがカットされた。関係者は「徳間氏はかなり憤りを感じていた。米国作品は日本ではカットされないのに、日本映画が米国で一方的にカットされるのは不公平という主張があるようだ」と言う。
「もののけ姫」をノー力ット上映した場合、一部の国では年齢制限が付く可能性もある。しかし、徳間社長はそれも辞さない構えだ。「もののけ姫」は7月12日に公開されて現在まで配給収入70億円を超える記録的なヒットになっている。同社長は「ディズニーの世界配給によって約300億円を稼ぎ出す」とみている。(当該記事より)
1997年9月3日 日経産業新聞
「もののけ姫」年内ロングラン決定 1200万人動員めざす
今夏公開したアニメ映画「もののけ姫」(宮崎駿監督)が、公開初日の七月十二日から夏休み最後の八月三十一日までの集計で、観客動員数877万人、興行収入約120億円に達した。東宝は二日、年内のロングランを決めたほか、一部地域では来年にまたがって上映することを明らかにした。この措置で、国内の映画興行で最高の配給収入記録を持つSF映画「E・T・」(96億円)を超える100億円突破、1200万人の動員を目指す、としている。
宮崎駿監督と、製作総指揮を担当した徳間書店の徳間康快社長、配給元の東宝の石田敏彦社長の三人は二日、都内のホテルで会見した。「もののけ姫」は、東宝の系列映画館の中でも洋画系と呼ばれる映画館を中心に上映しており、現在約230館で公開している。今後も公開映画館を増やす方針。石田社長によれば、九月の連休が重なる第三週にも観客動員は1000万人に達する見通し。
「もののけ姫」の主題歌で、宮崎監督が指名したテノール歌手、米良美一が歌う「もののけ姫」(徳間ジャパンコミュニケーションズ)ば現在32万枚、サントラ盤は27万枚をそれぞれ売り上げている。また東宝で製作した映画パンフレットは225万部を販売。キャラクターグッズも現在7億円の売り上げに達するなど、関連ビジネスも広がっているという。
現在、日本以外では台湾や香港で上映中で、アジア十五力国・地域で随時公開する。また米ウォルト・ディズニーとの提携で、北米圏での映画公開も来年三月をメドに進めている。最終的な公開時期などを詰めている。
「出資者に面目たった」「最終作品の考え変わらず」
会見した宮崎駿監督との一間一答は次の通り。
−配給収入が邦画トップになったことの感想は。
「そういうことには関心を持たずに映画をつくろうという姿勢でやってきた。ただ、エンターテインメントというのは制作に出資して頂いた方に責任を持つということ。出資者に損をさせなかったということが一番うれしい」「スタジオジブリは一作品にすべてをかける。ダメだった時はジブリも終わりという覚悟でやってきたが、こんなにフィーバーすることもあるんだなというのが率直な気持ちだ」
−ヒットの要因はどのように分析しているか。
「わかりません。映画をつくっていて長丁場になると自分が一番うんざりしますから。作り手としては、できた映画は興行の方にお任せするしかありません」
−宮崎監督最終作品ということだが、今回の大ヒットを受け、考え方は変えていないか。
「『もののけ姫』がヒットしたということで考え方は変わっていない。(絵コンテの制作や企画など)自分ができることはその範囲内で続けていこうと思っているが、(一枚一枚の絵にすべて手を入れるといった)『もののけ姫』と同じようなことができるとは思っていない。老害にならないようにしていきたい」
−制作会社は資金不足に悩んでいると言われている。
「一私に言わせれば、自分の作品のために出資が得られない、と不平を述べるのはおかしな話。エンターテインメントとは、利益を上げられる作品を生み出すことにある。作家は売れなくてものたれ死にする覚悟で取り組めはいいが、自分は作家ではない。出資者を説得してもかなわないのであれば、タイミングのいい時期が来るまで待てばいい」(当該記事より)
1997年9月3日 日刊スポーツ
「もののけ姫」9月に1000万人か
邦画史上配給収入新記録を更新中のアニメ映画「もののけ姫」(宮崎駿監督)の大ヒット報告パーティーが2日、都内で行われた。7月12日の公開以来、8月末までに887万417人を動員。過去最高だった「南極物語」(1983年=昭和58年)の59.5億円を大きく上回る73億円の配収を記録している。
東宝では今月中旬の連休までに1000万人の動員を予測している。製作総指揮の徳間書店・徳間康快社長は日本公開映画最高配収の96億円を上げた「E・T・」を標的に「9月中に抜かなければ松竹と組みます」と冗談交じりに気炎を上げた。
また、中国映画「阿片戦争」(謝晋監督)に、亡くなったダイアナ元妃をビクトリア女王役で出演交渉したこともある徳間社長は「いい女は早く死ぬものなのかなあ」と、このときばかりは表情を曇らせた。(当該記事より)
1997年9月3日 報知新聞
「もののけ姫」配収72億円 邦画歴代新記録
宮崎ワールドが日本映画の歴史を塗り変えた。公開中のアニメ映画「もののけ姫」(監督・宮崎駿)が配収72億円を超え、邦画で歴代新記録をマークしたことが2日、東宝から発表された。これまでの1位は「南極物語」(83年)の59億5000万円。14年ぶりの記録更新になる。洋画を合わせても昨年暮れに公開された映画「インディペンデンス・デイ」の68億円億円を上回る歴代三位。公開8週目に入っても「もののけ姫」の勢いは続いており今後、洋画第一位の「E・T・」(96億円)、二位の「ジュラシック・パーク」(83億円)に迫りそうだ。
東京・日比谷の帝国ホテルでは新記録達成の会見・パーティーが行われ宮崎監督、制作総指揮の徳間康快・徳間書店社長らが出席。「(公開後は)ずっと山小屋にいたの、全然知らなかった」と言う笑顔の宮崎監督に対し、徳間社長は「配収150億円くらいを目指したい」と気勢を上げていた。またパーティーでは氏家斉一郎・日本テレビ社長が「不調の巨人にも"もののけ"がついて欲しい」とあいさつし場内を沸かせた。同映画は来春にも全米公開される予定。(当該記事より)
1997年9月2日 朝日新聞 夕刊
「もののけ姫」邦画新記録 配給収入72億円 宣伝、CM料換算で50億円に
アニメ映画「もののけ姫」(宮崎駿監督)が、全国で大入りを続けている。世界的にヒット中の夏休み映画「ロスト・ワールド」を、日本では圧倒する勢いだ。幅広い世代に客層を広げ、八月末現在で配給収入七十億円台。十四年ぶりに邦画の新記録を樹立し、なお客足は衰えを見せない。恐竜をしのぐ快進撃の秘密を探った。(学芸部・馬場 秀司)
八月末の平日の正午、「もののけ姫」を上映する東京・有楽町マリオンの日劇プラザ前には、親子連れや若いカップル、熟年層までを含む百メートル以上の列ができた。劇場関係者によると、七月十二日に封切られてから、夏休み中はどの回も空席のない状態が続き、朝七時からのモーニングショーや、週末のレートショーを設けるなどの対応を迫られた。
邦画では過去最高だった「南極物語」(一九八三年)の配給収入五十九億五千万円を上回る大ヒット。業界では「八十億は見えた」という。いっぽう「ロスト・ワールド」は、いまのところ、お盆休み以降、観客数が伸び悩んでいる。映画業界紙などの調べによると、封切り一週目の「もののけ姫」の入場者数は百十万人。同じ日に封切られた「ロスト・ワールド」は一週目で百二十五万人と上回ったものの二週目から逆転し、以後、差は広がるばかりだ。八月末までに「もののけ姫」の入場者数は八百七十七万人。「ロスト・ワールド」は推定五百四十万人。
「正直言って、ここまで伸びるとは予測していなかった」と「もののけ姫」を配給する東宝映画営業部の千田諭部長はいう。
ヒットの構図
千田さんによると、ヒットの構図は
1.封切り当初の若者人気
2.女性への浸透
3.地方でも当たる−
だったという。
「もののけ姫」は初め、中・高校生が客の四割、二十歳代が二割と、圧倒的に若者の支持を受けた。次第に、五十歳代以降の熟年女性のグループも目立つようになり現在では女性の比率が六五%。また、九大都市とそれ以外の都市の客数を比べると、地方が六五%。東宝では地方都市でも二館以上で上映する体制を組んでいた。
また最近の邦画ヒット作「Shall We ダンス?」(配給収入十六億円)、「失楽園」(同二十億円=八月末まで)に比べても、「もののけ姫」は突出している。
東宝は宣伝に、洋画の大作並みの布陣を敷いた。協賛の大手生命保険会社が広告料金に換算すると十億円規模のタイアップCMを流し、全国約七十カ所の試写会を実施。さらに世界配給元のディズニーの協力などをあわせると、CM料換算で推計五十億円程度になるという。
「大宣伝効く」
興行問題に詳しい映画ジャーナリストの大高宏雄さんは「タイアップなど大キャンペーンが効いている。それに加え八四年の『風の谷のナウシカ』を見た世代が親になり、子どもを連れてきている動きも大きい」とみる。
さらに大高さんはこうも指摘する。
「『ロスト・ワールド』は、ジェットコースターにたとえれば、改良されて速度が増しただけ。日本人はSFXやCGものに、食傷気味になってきた。観客は精神の奥深さをこの映画に求めたのではないか」
また、東京大学教養学部助教授の小森陽一さんは「日本人の先行き不透明感が、『もののけ姫』には反映されている」という見方をする。
「いまの中高生は『エヴァンゲリオン』や『セーラームーン』などに見られる地球終末論を大人より強く感じている。地球環境の問題でも、高度経済成長を担った大人への不信感をもっている。学校で教える科学や文明を礼賛する事への疑いがある。大人の側も、この問題をだましだまし来たことに、疑問を感じ始めている。『もののけ姫』はその不安の感情を表した映画だと思う」と話している。(当該記事より)記事提供・高杉親知氏
邦画の歴代配給収入ベスト10
配給収入、 公開年
単位億円
1.もののけ姫 72 1997
2.南極物語 59.5 83
3.子猫物語 54 86
4.天と地と 51.5 90
5.敦煌 45 88
6.ビルマの竪琴 29.8 85
7.探偵物語/時をかける少女 28 83
8.紅の豚 27.6 92
9.影武者 27 80
10.平成狸合戦ぽんぽこ 26.5 94