●「もののけ姫」ニュースクリップ:9
news clip of "The Princess Mononoke"

1997年10月
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1997年10月30日 日経産業新聞


「もののけ姫」出版界で批評ブーム 文芸として「ナゾ」解く

 宮崎駿監督のアニメ映画「もののけ姫」を巡って出版界で批評ブームが静かに巻き起こっている。性差のフェミニズム、精神分析など現代の最先端の文芸批評かがアカデミックな雰囲気で宮崎作品を論じあい、まさに現代批評の実験場と化した格好だ。アニメは文学に比べ長らく「日陰者」扱いされてきた日本のサブカルチャーたが、宮崎氏の活躍で文芸批評の正当な対象として日の目が当たってきたようだ。

■格好の教科書
 もののけ姫では映画専門雑誌「キネマ旬報」や思想誌「ユリイカ」が臨時増刊を出して宮崎作品を特集。「別冊宝島」は「アニメの見方が変わる本」で宮崎氏の根底に流れる思想的な背景を研究している。また、「潮」では宮崎氏本人を登場させ、中世が専門の歴史学者、網野善彦氏と作品の舞台となった室町時代やその前後について魅力を論じた対談を掲載している。一方、「文芸春秋」は作家の長部日出雄氏と評論家の関川夏央氏の対談で映画のラストシーンを読み解く企画を設けた。宮崎ファンやディレッタント(好事家)にとっては、宮崎研究のための格好の教科書がそろったと言えるだろう。共通しているのは、歴史的解釈、心理学、ジェンダー(文化的性差)、記号論、精神分析など現代の代表的な批評のキーワードを手がかりに宮崎作品の解釈を試みている点だ。その関心はひとえに宮崎アニメに流れる「なぞ」にある。代表的なのが、ふゅーじょんぷろだくと社の「もののけ姫を説み解く」だ。例えば、登場人物の一人で遊女上がりの「エボシ御前」を取り上げ、中世の非支配階級やアウトサイダーの実態を探索してみたり、中世の針葉樹林文化と宮崎氏の思思の共通点を探っている。同誌は 「多角的に作品の思想的意図をあぶり出す」ことに主眼を置いたとしている。

■テキスト論
 こうした百家争鳴のの批評論を眺めていると、八○年代にポストモダンの文学論として一世をふうびしたロラン・バルトの「テクストの快楽」やウンベルト・エーコの「開かれた作品」を連想してしまう。作品の解釈は絶対的な権威者である作家の手中にあるのではなく、読者の側の主体的な解釈で紡ぎ出されるというテキスト論だ。

 九三年に岩渡書店が刊行を始めた「漱石全集」では、夏目漱石の作品を巡って文学以外の専門家がウパニシャッドなどインド古代哲学やフェミニズムの観点から再解釈を施したことが内外の注目を集めた。今起きているのは文学一辺倒だった文芸批評がアニメをも対象にし始め、その題材に宮崎作品が早々と取り上げられたという点にある。なぜこのような特異な現象が日本で起こるのだろうか。

 昨年、「風の答のナウシカを題材に「ナウシカ解読−ユートピアの臨界」を著した岡山大学の稲葉振一郎助教授は「日本映画・アニメ界で宮崎氏はメジャーな存在として確立している。小さいころからアニメに慣れてきた我々の世代が違和感なく批評の対象にしやすい環境にある」と説明する。

 稲葉助教授は社会思想が専門。「全共闘のちょっと前の世代の一人として宮崎氏を位置付けると、映画の『ナウシカ』に見られる素朴なエコロジー思想とマルクス主義の潜在的な共犯開係が背後に読み取れる」のだという。アカデミックな文脈の中で宮崎作品を位置付けているのだ。

■解釈の洪水
 東大学長で文芸評論家の蓮實重彦氏は「マルチメディア時代は一つのコンテンツ(情報の内容)が起点になって様々な解釈の洪水をもたらす情報の大流通が起こる」と予想する。アカデミックな衣をかぶった「もののけ姫現象」はその前兆なのかもしれない。(木ノ内敏久)(当該記事より)







1997年10月30日 読売新聞


「もののけ姫」E・T抜いた!

 アニメ映画「もののけ姫」(宮崎駿監督)の配給収入が、きょう30日、洋画、邦画を通じて国内最高だったスティーブン・スピルバーグ監督「E・T」の96 億円の記録を15年ぶりに更新することが確実になった。配給元の東宝が同日、会見を開いて正式発表する。

 歴代配収記録の上位は、「E・T」以下、「ジュラシック・パーク」(83億円)、「インデペンデンス・デイ」(68億円)と洋画が独占しており、邦画では「南極物語」の59億円が最高だった。今回の記録は、これを40億円近くも上回っており、7月の上映開始からの総観客数も1150万人を突破。邦画としては驚異的なヒットとなっている。今月に入り、客足は衰えたものの、上映は年末まで続けられる予定で、初の配収100億円の大台達成の可能性も出てきた。

 映画評論家の佐藤忠男さんは「アメリカ映画が席けんする中、邦画でも十分太刀打ちできるということを示してくれたのは喜ばしい。アニメは日本を代表する文化であるという認識が高まってきたところに、力作が登場したことがヒットの大きな要因ではないか」と話している。(当該記事より)







1997年10月30日 報知新聞


「もののけ姫」きょう配収日本一達成

宮崎駿監督のアニメ大作映画「もののけ姫」(東宝配給)の配給収入が、30日、「E・T・」(82年公開)が持つ洋画・邦画を通じて日本で公開された映画の配給記録96億円を15年ぶりに更新することが確実になった。「もののけ姫」は7 月の公開以来、すでに総観客数1150万人を突破している"モンスター映画"。(当該記事より)







1997年10月24日

毎日新聞  記者の目



大ヒットの「もののけ姫」 観客が育てよう日本映画

 この夏、前代未聞の大ヒットを記録し、社会現象ともなった宮崎駿監督のアニメーション映画「もののけ姫」。この人気、トレンディーなイタリア料理店の前にできる行列と似ているような気もするが、これだけの観客を映画館に向かわせた力には感嘆せずにはいられない。

 「もののけ姫」の公開は7月12日。それからわずか6週間で日本の配当収入記録だった「南極物語」の59億5000万円を抜き去り、13日現在の観客動員数は約1140万人、興行収入約156億7000万円、配給収入は約94億円。1982年に公開された「E・T・」(スティーブン・スピルバーグ監督)が記録した配収の日本記録96億円も今月中に更新しそうだ。

 東京・有楽町の映画館では「上映の4〜5時間前から並ばないと座れない状態が続いた。9月半ばまで、全部の回が立ち見。すべてが異常」と驚く。この現象、巧みな宣伝戦略による部分も大きい。宮崎監督の名前を前面に押し出し、加えて「最後の作品」と危機感をあおった。それに「控えめに言って50億円」(東宝宣伝部)という、邦画では異例の大宣伝。試写会やテレビCMなど事前の露出度も高く、宮崎監督自ら全国をキャンペーンで行脚した。

 スタイルを考えれば、これほどのヒットはしない映画のはずだ。画面にあふれるのは暴力と破壊。テーマは複雑、ハッピーエンドもなく、家族向けの枠からはみ出している。説明されない部分が多く、だれにでも分かる映画ではない。

 宮崎監督のネームバリューと前評判や大宣伝に乗せられて、大人から子供までアニメや映画に関心がなかった人たちも「はやっているから、とりあえず」と映画館に足を運んだ、という側面は否定できない。とはいうものの、これだけでは説明が不十分だ。やはり一番の要因は、期待を裏切らない、あるいはそれ以上の作品の質の高さにあることは間違いない。並んでまでして入ったイタリア料理店の味は、まさに絶品だった、というわけだ。

 宮崎監督は一貫したテーマとして、自然と人間、生きることの肯定を掲げてきた。「もののけ姫」ではそれを究極まで突き詰めた。プロデューサーとして制作に携わったスタジオジブリの鈴木敏夫さんによると、宮崎監督は「悩み抜き、苦しんだ。それをそのまま映画に吐露した」と話す。

 加えて最高度のアニメーション技術。制作費20億円、セル画14万枚は、少なくとも通常の2〜3倍。コンピューターグラフィックスも取り入れ、3年をかけて制作した。そうして描かれたのは、主人公アシタカと「もののけ姫」サンに託した、今に生きる私たちの姿だ。シシ神の森で人間と動物の争いに否応なく巻き込まれる2人の姿は、手に余る問題に取り囲まれる私たちと同じだ。宮崎監督は「愛とヒューマニズムによる解決」というきれいごとを排して、厳しい現実を見すえた。

 宮崎アニメの分析を続けるフリーライターの叶精二さんは、こう話す。「宮崎監督は、現代はそういう世の中だと示した上で、それでも生きるしかないんだ、とメッセージを送った」

 宮崎監督のテーマは深められ、時代の気分を的確に捕らえた。その思いを映像化できる最高の技術とスタッフがそろった。さらに、ヒットへの不安を振り切って監督の才能をバックアップするスポンサーがいた。そして、素晴らしい映像を通して語られた宮崎監督の思いに、観客が現代の問題として深く広く共感した。あらゆる要素が、最高のタイミングで出会ったのだ。

 「もののけ姫」は実に幸運な映画だった。才能に恵まれた作家に作る機会が与えられず、ようやく作った優れた作品も興行的には成功しない、という例はたくさんある。

 カンヌ映画祭でグランプリを獲得した今村昌平監督の「うなぎ」は、公開直前に受賞が決まり、急きょ拡大公開されたが、配収はやっと2億円。公開が終わってからモントリオール映画祭で最優秀監督賞が決まった市川準監督の「東京夜曲」は、わずか1500万円だ。「HANA―BI」でベネチア映画祭グランプリをとった北野武監督の作品も、これまでは興行的な成績は今一つ。海外で評価されないと認められない、とやゆされる日本映画だが、海外で評価されてもこの程度だ。これが日本映画の置かれた現実ではある。

 映画的才能を育てるのは、結局は観客だ。たくさん客が入れば、たくさんの映画が作られるようになり、傑作が生まれる機会も増える。宮崎監督も、過去の作品に観客が足を運んだから映画を作り続けることができ、才能を伸ばした。「もののけ姫」のヒットは、客が入らないから映画が作れない、という日本映画の悪循環を断ち切るいい機会になりうる。

 「もののけ姫」を見て感動した皆さん、これからも映画館に足を運ぼう。そして今度は自分の目で、あすの「もののけ姫」を探してみてはいかがだろう。(勝田友巳・学芸部)(当該記事より)







1997年10月15日 報知新聞


迫力を再確認させた「もののけ姫」の"しわざ"

 「もののけ姫」が「南極物語」の持つ邦画の配給収入記録を14年ぶりに塗り替え、さらに「E・T・」の持つ日本公開洋画の記録を15年ぶりに破るのが確実視される大ヒット(配収92億目=10月6日現在)になった裏には、ファンのうれしい誤解もある。アニメを作るには大きな作業が二つある。物語を作ることと、絵を描くアニメーターとしての仕事だ。「もののけ姫」の作画は史上最高の14万8000 枚(「耳を澄ませば」で6万8000枚)、うち宮崎監督は8万枚を描いた。

 同作品のキャンペーンで全国を回った際、「年齢的にアニメーターの仕事は無理」と語ったのがロコミで「宮崎監督引退=最後の作品」というふうに独り歩きし、ヒットに輸をかけた。スタジオ・ジブリでは「宮崎はアニメーターは辞めますが、脚本も書きますし、絵コンテも描き続けます」と断言している。

 一方、アメリカは現在、ジャパニメーションが花盛り。本命「ロスト・ワールド」を破った「もののけ姫」は注目の的。CNN、CBS、タイムといったマスコミ媒体が次々に取り上げる中、来年春にもディズニー1の配給で全米で上映される。

 さて、対抗馬の「ロスト・ワールド」も60億円以上を稼ぎ、通常130億円のパイを分け合う夏休み興行が、史上初めて配給収入合計が200億円を突破。邦画は8月末現在、10億円を超えた作品が「失楽園」「ドラえもん」など7本、洋画は65 億円の「インデペンデンス・デイ」、「スピード2」など9本を数える。

 邦画は8月までの配収が3社合計で227億円(対前年比148%)、洋画もメジャー15社合計で241億円(同157.4%)で、9月以降もこの好況のまま推移すれば年間映画人ロ1億5000万人も夢ではない。しかし、これを持って「邦画復興」と見るのは早計だ。

 興行評論家の大高宏雄さんはいう。「この好況現象はすべて『もののけ姫』の"しわざ"ですからね、突然変異ですよ。でも、動員した1115万人(10月6日現在)の65%はローカル(地方)の客。普通は映画館に足を運ばない人たちに、ワイドスクリーン、ドルビーサウンドの迫力を再認識させた功績は大きい。次につながりますからね」と語っている。(阿部 嘉典)(当該記事より)







1997年10月14日 報知新聞


配収日本新が確実な「もののけ姫」

 今年の夏、邦画界は「もののけ姫」の驚異的ヒットと、カンヌの「うなぎ」に続き、ベネチアでも「HANABI」が"グランプリ"を受賞。世界3大映画祭のうち、2 つを制し「邦画復興(ルネサンス)の声が高い。果たして実態はどうなのか。興行、製作の両面から検証してみた。

 束京、大阪、福岡と大都市の目抜き通りに映画館を構え、毎年、配給収入の年間記録を更新し続けている東宝が、日本一の興行網を持ってしてもどうしても抜けない記録がひとつあった。松竹・東急系の映画館で上映した「E・T・」の持つ日本公開外国映画の配給収入記録96億円である。15年の間、ある時は「ジュラシックパーク」に、またある時は「ダイ・ハード3」にかけたが「E・T・」の壁は厚かった。それを「もののけ姫」は、8月30日には「南極物語」の邦画配給収入記録を破り、今月末か来月の上旬には「E・T・」の96億円を抜くことが確実になった。

 この快挙に東宝・松岡功会長は「もののけ姫」を製作したスタジオ・ジブリを擁する徳間書店・徳間康快社長を招き「興行者として、こういう記録に立ち会えてうれしい」とあいさつ、松岡会長の目には光るものがあった。また、徳間社長は宮崎駿監督に「76年間生きてきて一番うれしい」と祝福した。

 宮崎監督が日本を舞台に冒険活劇物を描きたいと思ったのは18年前。5、6年前に絵本「もののけ姫」を描いたが、1994年にアニメ化する時に全部書き換えた。ヒットの原因について「マスコミは宮崎アニメの集大成というが、違いますね。新境地ですよ」というのはスタジオ・ジブリの鈴木敏夫製作部長。「これまでの宮崎アニメと違う点に注目してください。普通、主人公の少年が旅に出る時、村の運命を背負って行く。今回は個人的理由で旅に出る。アクションも得意なのに十八番の空も飛ばないし、そう快感がない。ラストの緑のよみがえりかたもワッといかない。要所要所を抑えている。つまり、人間と自然の共生に、あの宮崎監督も悩んでいる点が観客の共感を呼んだのでは」と分析する。

 製作費も合めてペイラインは36億円。どうせならでっかくと、目標を邦画の配収記録60億円に決めた。宮崎監督らが「いける」という手応えを感じたのは全国22か所の宣伝キャンペーンに回った時。札幌で4館の上映が決まったり、ある地方では「ロスト・ワールド」を外して「もののけ姫」に替える映画館も出てきて異常な熱気を感じたからだ。

 今、徳間社長は『もののけ姫』が『E・T・』の記録を破るのは既定の事実。今世紀中破れない記録を作れ」と1500万人動員、配給収入123億円を目標に設定。東宝も来年2月までの続映を決めた。(敬称略)(阿部 嘉典専門委員)(当該記事より)







1997年10月11日 The Japan Times


「もののけ姫」、文化の壁を超える

 宮崎駿の歴史的な作品「もののけ姫」は、日本の劇場に観客を動員し続けている。この現象は、疑いもなく15年前に「E・T・」が樹立した配収96億円の記録をうち破るだろう。来年3月早々には、ウォルト・ディズニーによってその室町時代の叙事詩(「もののけ姫」)がアメリカで公開されるだろう。

 長年にわたって、宮崎駿はディズニーを批判的に見ていた。それは、ディズニーの「ライオン・キング」が手塚 治の「ジャングル大帝」のアイデアを流用したものであると見ていたからである。しかし、スタジオジブリの親会社であり、昨年にMouse Houseとの取引を中止した徳間書店は、「もののけ姫」と、邦画の配収最高記録を持っている最近5作品を含むジブリ8作品を世界に配給する権利をディズニーに与えた。

「もののけ姫」は、劇場のオーナーから東宝、最近の記者会見でなぜこんなに(配収の)数字が伸びるのか分からないと言わしめた宮崎氏自身をも含む全ての人の予測を上回った。徳間書店の徳間康快社長も、「ディズニーの人々はこの結果には全く驚いた」と言った。しかし、ディズニーは、「もののけ姫」をどのようにしてアメリカの市場に投入するのかをまだ見極めようとしている。予定の詳細を調整するためにジブリプロデューサーの鈴木敏夫氏に会ったブエナビスタ・ホームエイタテインメントのマイケル・ジョンソン社長は、「我々は、可能な限り最もひろくそれを配給するつもりである。」と言った。「我々は、このフィルムの周辺で神秘性を作り上げることを望んでおり、私は『もののけ姫』がそれに値すると考えている。」

 ディズニーの最も大きな挑戦は、アニメーション=子どものものであるというアメリカでの認識を打ち破ることになるだろう。「もののけ姫」は、環境や人間の問題をテーマに持つ、複雑で時には血なまぐさい叙事詩である。もちろん、「もののけ姫」は日本の子ども達を楽しませてはいるが、午前6時から上映されるという劇場の観客の大半は成人である。「アメリカの外では、アニメーションは成熟した芸術である」とジョンソンは言った。「アメリカでは、人々はアニメーションを漫画と混同している。」

 この現状に対し、ディズニーは、特に日本のアニメーション文化に理解のあるアメリカの10代から20代の世代に訴えかけなければならない。昨年、スタジオIGがヒットさせた「攻殻機動隊」は、それがささやかな漫画娯楽作品であるにもかかららず8月の週間ビデオ販売チャートのトップを飾ってもいる。

 「もののけ姫」に関する別の問題は、その2時間以上におよぶ上映時間の長さである。それは徳間書店の合意なくしてカットすることが出来ない。宮崎駿は、カットを好まないようであるが、ディズニーおよびMiramax'sの方針からみれば、(劇場の回転の都合などで)上映時間を削ることは当たり前のことである。特に、日本でヒットした"Shall We Dance"は、アメリカでは20分以上カットされた。また、「もののけ姫」は吹き替え版と字幕版の両方が市場に投入される予定である。吹き替え版のためにトップクラスの声優を獲得するために費用を惜しまないが、年長の観客は字幕版の方を好むであろうとジョンソン社長は予測している。

 ディズニーは、今アメリカでの配給をどのようにするかを決定しなければならない。ブエナ・ビスタは、アメリカ以外の公開には別途上映料を求めることになる。なお、その公開はイギリス、フランス、スペイン、オーストラリア、及びブラジルで計画されている。

 宮崎駿の過去作品を収録したビデオもまた、来年四月以降に強気の販売を行う計画を準備している。ブエナ・ビスタは、声の出演に有力な人材を充てるだろう、そしておそらくは小劇場や大学構内の劇場などでの上映を試みるだろう。「我々は、これらの小さな劇場で、ゲリラ的なマーケティングを行う予定である。」とジョンソン社長は言っている。「我々は、その公開に際し、イベントを打つ予定である。しかし、それは我々にとっては未知の経験であるだろう。−しかし、我々は海外のフィルムが敬遠されるという壁を突破しなければならない。」

 従来、「となりのトトロ」は、アメリカで見ることの出来る唯一の宮崎アニメであった。FOXビデオはトトロのビデオを、ディズニーの予測を超える65万本売った。しかし何と言っても、「もののけ姫」は今まで日本から来た文化の中で最も成功するであろうと言われている。それは、生き残りをかける日本の生産現場に、国際的な市場を開いていく糸口になるだろう。

 もし、宮崎氏とディズニーと取り引きが利益となるならば、これからも続いていくに違いない。ともあれ、成功のための3つのキーワードは、観客をつかむこと、フィルム制作や配給のための資金を用意すること、そして配給戦略である。その点でディズニーは申し分ない。(当該記事より)







1997年10月1日 日経産業新聞


「もののけ姫」で最高益 東宝 今中間 映画部門ヒット相次ぐ

 東宝が九月三十日発表した98年2月期の中間決算は、アニメ映画「もののけ姫」効果で売上高、経常利益とも過去最高を記録した。映画興行でヒットが相次いだほか、帝国劇場(東京・千代田)の演劇「レ・ミゼラブル」が好評だったことが寄与した。売上高は四百六十七億二百万円(前年同期比一九・八%増)、経常利益は六十七億七千七百万円(同一五・五%増)だった。

 映画の製作配給部門で業績に奇与したのは「もののけ姫」(中間決算時点で配収七十二億円)、「97ドラえもん・フェスティバル」(同十九億四千五百万円)、「学校の怪談3」(同十億円)など。演劇部門は宝塚歌劇の五公演が過去最高の興行収入を記録したほか、千人以上を収客する帝劇での「レ・ミゼラブル」が十八億円の興収を上げた。

 一方、不振が目立ったのはテレビ制作部門。制作本数の滅少から、この部門の売上高は四億二干二百万円(同三八・三%減)だった。下半期は伊丹十三監督の「マルタイの女」や人気脚本家、三谷幸喜が監督する「ラヂオの時間」が公開となる。「もののけ姫」のロングラン上映も合わせて、九八年二月期は売上高八百二十七億二千万円、経常利益百十億五千万円を見込んでいる。(当該記事より)







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