●「もののけ姫」ニュースクリップ:21
news clip of "The Princess Mononoke"

1998年4月
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1998年4月22日 日経産業新聞


東宝 今期は減収減益予想 「もののけ姫」並み配収困難

 「ゴジラ」は「もののけ姫」に及ばず?−−東宝が二十一日発表した九八年ニ月期決算によると、昨年夏公開した「もののけ姫」のヒットにより売上高、経常利益、営業利益がいずれも過去最高を記録した。九九年二月期は米国版「ゴジラ」が目玉作品だが、配給収入は五十億円と厳しく見積もっており、決算も減収減益を予想している。

 同社は昨年、配収十億円を超えるヒット作品が五本あった。中でも「もののけ姫」は配収約百十億円で日本の映画史上最高記録となったほか、パンフレットも二百六十二万部を売り上げた。今年は夏休みに「ゴジラ」を全国約三百館で上映するが、老若男女を集めた「もののけ姫」と比べて、幅広い年齢層を集めにくいと判断している。今期の自社制作は「モスラ3」など四作品で、制作費合計約十五億円を投入する。今年公開した映画は好調に客足を集めており、特に三月に公開した「ドラえもん のび太の南海大冒険」は配収で二十億円を超える勢い。これは八○年から始まった同シリーズで最高の配収となる見通し。

 邦画は「ポケットモンスター」「踊る大捜査線」など人気テレビ番組の映画化作品を扱うほか、洋画も「工イリアン4」「ディカプリオの仮面の男」など話題作を上映する。ただ「もののけ姫」級のヒットが見込める映画はなく、九九年二月期は売上高が六百九十四億四千万円(前期比約二○%減)、経常利益も九十一億七千万円(同約二○%減)と減収減益を見込んでいる。(当該記事より)







1998年4月16日 読売新聞 朝刊広告


ジブリがいっぱいコレクション もののけ姫ビデオ 6月26日発売! 価格4500円(税抜き)

ビデオご予約キャンペーン開始!「コダマのキーホルダー」がもらえる。
先着626000名さまに発売記念プレゼント

同時発売
〜2年間の制作過程完全記録〜 「もののけ姫はこうして生まれた」全編6時間(3巻セット)価格10000円(税抜き)







1998年4月16日 日本経済新聞


「もののけ姫」ビデオ 500万本の販売目指す

 もののけ姫が自宅にやってくる−−。米ディズニーグループのブエナ・ビスタ・ジャパン(東京・目黒)は六月二十六日から、昨年劇場公開して大ヒットしたアニメーション「もののけ姫」(宮崎駿監督)のビデオソフトを発売する。価格は四千五百円。今月十六日から予約を受け付ける。大量宣伝で認知度を高め、ビデオソフトでは異例の五百万本の販売を目指す。

 六月の発売はレンタルと同時。十億〜十五億円の宣伝費を投じ、全国約二百八十駅での広告やテレビCMを実施する。映画の制作過程などを約六時間四十分にまとめたビデオ「もののけ姫はこうして生まれた」を全三巻で同時発売する。価格は一万円。(当該記事より)







1998年4月16日 報知新聞


マドンナ もののけ姫歌う 全米制覇の強い味方

 国内での大ヒットに続き年内にも全米公開が予定されている映画「もののけ姫」(宮崎駿監督)の米吹き替え版主題歌を米ポップス界のスーパースター・マドンナ(38)が歌うことが有力になった。ゼネラル・プロデューサーの徳間康快・徳間書店社長(76)が明らかにしたもの。また、待望のビデオが6月26日に発売されることも決定。初回出荷200万本。目標売り上げ500万本と、こちらも劇場動員に続いて驚異の日本新記録を狙う。

吹き替え版
 早ければ今秋にも全米100都市、1000館という前代未聞の規模で公開されることが内定している「もののけ姫」吹き替え版。今夏以降に予定されているプレミア試写会にはクリントン米大統領も出席する"今世紀最大のアニメ映画"をマドンナの声が彩る可能性が高くなった。

 96年、宮崎監督主宰のスタジオ・ジブリと業務提携した米ディズニー社が米版主題歌の第一候補としてアプローチしているのがマドンナ。96年に生まれた長女・ルルド・マリアちゃんをでき愛しているマドンナも子供に夢を与える宮崎作品への参加を前向きに検討中だという。

オリジナル曲
 カウンターテナー歌手・米良美一(26)が歌った日本版主題歌はシングルが70万枚、サントラが60万枚と日本アニメ映画史上最大のヒットとなった。が、マドンナが歌う米版主題歌は全くのオリジナルとなる予定で、現在、大物作詞・作曲家コンビが作成中という。

 「マドンナが歌うことで『もののけ姫』全体がアメリカナイズされると思う。日本で大ヒットした映画の翻訳ではなく、アメリカ版『もののけ姫』として勝負したい」と徳間社長。「日本の米良、アメリカのマドンナと主題歌で大いにアピールしたい」と続ける。

 マドンナは97年、主演映画「エビータ」の主題歌「ユー・マスト・ラブ・ミー」でアカデミー主題歌賞を受賞。米映画、音楽会でトップに君臨する米版「もののけ姫」にとって大きな味方となりそうだ。

タイタニックと激しいバトル
 現在もヒット記録を更新中の「もののけ姫」に日本記録を激しく追い上げているのが「タイタニック」。14日現在で観客動員950万人、興行収入147億円と激しい追い上げを見せている。「早ければ5月末にも『もののけ姫』を捕らえる」と20世紀フォックス。一方、「現時点で公衆で34億円も差がある。この数字を逆転するのは難しいのでは」と分析する興行関係者も−。もののけVSタイタニック。日米超大作の正規の興行戦争からも目が離せない。 (当該記事より)


ビデオ化決定!! 驚異の500万本狙う

 「もののけ姫」は観客動員1320万人、興収181億円(4月14日現在)の日本映画史上の最高記録をいまだ更新中。日本人の10人に1人が見た大ヒット映画のビデオ化が決まった。

 6月26日、ブエナ・ビスタ・ホームエンターテイメントから4500円で発売されるが、この発売規模がすごい。初回出荷で200万本突破が、既に決定。初回出荷数の従来の記録140万本をはるかに上回る新記録だ。「売り上げ500万本は狙えます」とブエナ・ビスタの星野康二日本代表。これまでの日本でのビデオ売り上げ記録は「アラジン」(92年)の220万本。

 ブエナでは、「もののけ姫」を宮崎監督が構想し、制作・公開に至るまでの2年間を追い続けたドキュメント・ビデオ「『もののけ姫』はこうして生まれた」も同時発売。こちらは全3巻セットで価格1万円。

ビデオ版「もののけ姫」は16日から全国ビデオ店で予約開始。特典として映画出演キャラクターのコダマのキーホルダーがつく。問い合わせはブエナ・ビスタ・ホームエンタテインメント(03-5434-8351)まで。







1998年4月16日 スポーツニッポン第9面 全面広告特集


もののけ姫が家にくる。 6・26ビデオ発売

 昨年、日本でも映画公開市場初の配給収入110億円を突破し、82年の「E・T・」(S・スピルバーグ監督)がもっていた96億円の記録を打ち破った「もののけ姫」(宮崎駿監督)は、アニメ初の「日本アカデミー賞最優秀作品賞」も受賞、数々の映画記録を塗り替えたが、9ヶ月たった今も劇場公開されており、立ち見がでるほどの大盛況だ。こも「もののけ姫」が、またまた何かをやってくれそうな気配で、6月26日(金)にビデオが発売、きょうから予約を開始する。冬には全米公開されることが決定、どんどん成長し独り歩きをはじめた「もののけ姫」だが、なぜこんなに受けるのか、今だからわかる理由をコピーライターの糸井重里氏に"イトイ式もののけ論"を聞いてみると・・・

かなり難産!
 実は「生きろ。」というコピー、よみがえった作品だった−。コピーライターの糸井重里氏は、今までジブリ映画のコピーをいくつか手がけてきた。今回も、ぴったりハマってる!きっと一筆書きのようにすらすら言葉が浮かんできたのだろうと思ったところ「これが大変だったんだよね」とひと言。

 「この話はだれでもわかる簡単なテーマじゃない。けれど、子供たちのも見せたいという欲張りな作品。それをどのように表現するかとなると、 表現しようがなかった」まさにお手上げ状態。覚えてないほどたくさんのコピーを考えた。結果はボツ、ボツ、ボツ…。もう勘弁してほしい、1日くらい逃げ出したくなったことも。その中に「生きろ。」もあった。しばらく返事もなく、ちゅうぶらりん状態だった。自分から何も言わなかった。するとある日、宮崎監督から、"生きろ。"がいいね」その時はホッとした。

なぜ売れる?
 それだけ苦労したのだから、"もののけ"的な大ヒットを、さぞかし喜んでいるのかと思えば、「なぜこんなに売れたの?ってきのが正直な気持ち」
 このご時世になぜなのか?考えに考えて出てきた答えは「分からない」だった。だが文化、芸術において「わからない」は必需品。なぜなら、それらは人の思惑を超えたところにあるからだ。「もののけ姫」にも同じことがいえる。「このわからなさがあるからこそ、生き延びていく理由がある。だから最大の賛辞だね」とキッパリ。

 ただ、この暗い話題ばかり目立つ時代に当たったというのはやはりうれしかったらしい。最低限に「必要」なものはそろい「欲しい」ものの時代にはった今でも。心の中に「必要」なものがまだ残っていた。「もののけ姫」はそれを見せてくれた。「ノスタルジックは映画はわんさかあった。だが、次の時代も自分たちは生きなくてはならない、というメッセージがある前向きな映画は本当に少なかった」という。先の見えない世の中に唯一希望の持てる映画だったからだ。

 また「サンはえらいよ。この過保護の時代に強く生きている子供なよね。もう一度会いたいね」と。父親の顔をチラリとのぞかせた。このあたりに、このコピーを"生きろ。"とした意味があるような気がする。

ピタリはまる
「"生きろ。"は映画そのもの。宮崎監督がいいたかったことだと思う」−。商品の中にいっぱい詰まった言葉からピッタリのものを選び出すのが自分の仕事だという。3文字で映画を表現したあたりは真骨頂だ。6月にビデオも発売され、冬には全米公開も決まり、これからもっとはばたいていく「もののけ姫」だが、「今になった持ちのいいコピーをつくってよかったと思っている」と語る。確かに時がたっても色あせない言葉だ。

 英語ではどのようなコピーが付くかも楽しみのようだ。単に直訳では込む人生からアメリカには受け入れられない。なぜなら彼らにとっては生きることは死なないこと、まさしく戦いだからだ。「もし、自分がつけるとすればレット・イット・ビーかな」
 
 ビデオ発売のコピーも糸井氏作の「もののけ姫が家にくる。」まさにそのものだ。
だが、言葉の中には、彼の意図が隠されている。ビデオでは1対1の世界になれる。この作品は自分に語りかけてくれた方が、本質がもっと伝わるからだ。劇場で感じたものとは別の感情がうまれるはずだという。早くビデオが見てみたい。そう思わせるところが糸井氏の仕掛けた言葉のマジックだ。


全米公開決定! アシタカの声 レオ!?それともデイモン!?
 この冬ウォルト・ディズニー社参加のミラマックス社の配給で全米公開されることが決定、それも日本映画としては最大の規模で上映されるという(ちなみにShall we ダンス?は約200館で大成功を収めた)。ここで今大きな話題になっているのが、主人公のアシタカの声をだれがやるかということだ。

 現在候補にあがっているのが「タイタニック」で愛を信じるジャックを演じ、何人もの女性を感動させ魅了したレオナルド・ディカプリオが有力。彼が出演した「ロミオ&ジュリエット」を見てシェークスピアの興味をみったティーンズが急増したというから、効果は計り知れない。レオ自身も「もののけ姫」を見て、作品に好感を持っているという。また、もう1人候補にあがっているのがアメリカでは人気急上昇、先日行われたアカデミー賞で脚本賞を受賞したマット・デイモン。ハーバード大の秀才でありながら、あのマスク…。天は二物を"与える"といった感じだ。

 なお、もののけ姫・サンの声には、グウィネス・パウトローが有力視されている。とても楽しみだ。


宮崎監督、新たに"動く"
 「もののけ姫」で引退宣言をした宮崎監督だが、とんでもない!まだまだやってくれます。すでに、新たな活動を開始している。

 今、監督が一番関心を抱くのは「21世紀を死なないための都市はどうあるべきか」である。アメリカ在住の景相家・荒川修作氏の新たな都市構造に共感したという宮崎監督は「本当にやすらぎを追求し、人と人との共生とそれに基づいた新しい生活と街を作ることではじめて失ったものの再建が可能になる」という。

 現代の日本は困難な問題に出くわしたとき、その場その場で対処してきた。だが。非現実的なことが日常茶飯事に起こる昨今。応急処置ではもはや不可能。しかし、人間は自分たちの手でつくって、生きていかなければならない。なぜなら、このような社会にしたのは人間なのだから…。

作品ごとに深く考えさせられることが多いが、構想を聞いただけでも「なるほど」とうなずきたくなる。映画となる日が待ち遠しい。(当該文章より)







1998年4月16日 スポーツニッポン


「もののけ姫」にク大統領招待

徳間書店とスポーツニッポン新聞社共催の映画「大いなる遺産」(監督アルフォンソ・キュアロン)のVIP試写会が15日、東京・新橋の徳間ホールで行われ、政財界トップが鑑賞に訪れた。英国の文豪チャールズ・ディッケンズの同名小説を現代風にアレンジ。徳間康快社長は、米国進出が決まっている「もののけ姫」(監督宮崎駿)を引き合いに「何年たっても色あせない作品」とPR。「もののけ姫」の試写会が10月下旬、クリントン大統領夫妻を招いて開かれる予定であることも明かした。映画は6月中旬公開。(当該記事より)







1998年4月13日 読売新聞夕刊 中高生で作るページ








1998年4月3日 朝日新聞 夕刊


宮崎駿、新作に意欲 「引退」きっぱり撤回 淀川賞受賞

「最後の作品」とも言われた「もののけ姫」が記録破りのヒットとなった宮崎駿監督が今年の淀川長治賞(主催・集英社)を受賞した。一日の授賞式で、宮崎監督は、「『引退』は、つい言ってしまったこと」と、改めて現役続投を宣言した。

 引退説の発端は「もののけ姫」の製作発表会見。「こっちは、この作品を果たして完成できるのかという本当に追いつめられた状態だった。なのに、『次の作品はユなんて聞かれるので、『次はない!』と言っちゃった。アニメーターとしてはもう年ですが、ほかの形でこれからもやれることをやっていきたい」

 しばしの休息を楽しんで、そろそろ新作の構想も。「次はそんなに大きな作品にはならないだろう。今世紀中にはお見せできると思います」

 同賞は、映画文化の発展に功績のあった個人・団体をたたえるもの。淀川さんは「もののけ姫」を試写で見て、さらに満員の映画館でも見直した。「この映画、地味なんです。でも、太古の緑、緑の日本をたっぷり見せた。それがこれだけロングランし、いっぱいいっぱい人が来た。いい映画を作ると、みんなちゃんとわかる。それが何よりもうれしいね。うれしくて跳び上がりたい。日本の大衆に自信を取り戻しました」 (当該記事より)







1998年4月1日 毎日新聞 追跡


「もののけ姫」の大ヒットで『救世主』を手放せぬ映画界事情
激務、過酷、重圧それでも… 宮崎駿監督にまた新作


 宮崎アニメが復活する。宮崎駿監督(57)が映画「もののけ姫」を最後に「引退」をほのめかしてから1年。その間「引退宣言」が独り歩きする一方、映画は興行収入約180億円、観客動員数約1300万人という大ヒット作品として映画界の話題を独占、今年の日本アカデミー賞最優秀作品賞など各賞をさらった。宮崎さん自身は今年1月、設立以来アニメ製作の本拠地としてきた「スタジオジブリ」を退いたが、「斜陽」の日本映画界に現れた救世主を世間はほうっておいてくれず、既に世界公開に向けた次作の準備に入った。「引退宣言」の裏にあるヒットメーカーへの重圧、過酷な創作作業。そして映画、テレビ、ゲームと好調を維持するアニメ業界の裏事情を追った。 【長尾 真輔】

沢庵石(たくあんいし)の苦悩
 午前11時から翌朝4時までの作業が、1年半続いた。製作費23億5000万円を投じ、約100人に及ぶスタッフとともに「もののけ姫」を作り上げた宮崎監督は「その分、確実に何年か寿命を縮めたと思う」と激務の日々を振り返る。

 ジブリを退職した直後、夫妻で営む著作権管理会社「二馬力」(東京都武蔵野市)で、宮崎さんに会った。「映画がちゃんと完成することと、長生きや女房子供の命のどっちが大切かと言われれば『映画』と答えるんです。そういう業を持ってるんです。善悪の問題じゃない。そこまで追い詰められる仕事なんです」

 「風の谷のナウシカ」(1984年)、「となりのトトロ」(88年)の監督として知られる宮崎さんだが、「劇場では全く赤字。これでコケたらおしまいと言われた『魔女の宅急便』(89年)で初めて黒字になった」と苦笑を浮かべる。

 宮崎さんは自分を「沢庵石」にたとえる。創作に傾けた情熱の深さ、こだわりは周囲をぞっとさせるほどだ。「僕と仕事するのはしんどいと思うんですよ。なんか沢庵石が乗っかってるみたいでね。でも仕事をやる時は遠慮しません。相手がぎゅーぎゅー言っても、沢庵石には沢庵石の苦悩がある」と語る。

 昨年3月、「もののけ姫」製作発表の場で宮崎さんは「これで最後になってもいい」と発言、「引退宣言」と騒がれた。だが、周囲は「大げさに報道されるのは今回が初めてだが、以前から作品完成の度に『もうやめたい』と何度も言ってました」(スタジオジブリ広報担当)。激し過ぎるエネルギーの放出が宮崎さんに「最後」を意識させてしまうのかもしれない。

ついえた夢
 「引退なんかしません、彼は生涯やりますよ」と宮崎アニメを製作してきた徳間康快・徳間書店社長(76)は言う。「製作費は30億〜50億円。『もののけ姫』以上の大作を作る。環境の悪化、テロリズム、地震、人口爆発などを抱えた21世紀をテーマに、世界的な作品にしたい」。徳間社長は、「斜陽」というまくら言葉がつきまとってきた日本映画の悪夢を吹き払うように笑った。

 しかし、ジブリの若手社員の一人は、宮崎さんの胸の内を代弁するように語る。「金を回収しないといけないという状況から解放され、回収額がゼロでもいいような作品を作りたい。だが、会社にいれば難しい」

 宮崎さんには、アニメーションに携わり始めた若いころから温めていた企画があった。「少人数のスタッフでやる作品。詳しくは言えないが、原作と映画を交互に繰り返し見て、イメージが膨らむ作品を作りたい」。宮崎さんが「コンちゃん」と呼び、長年にわたり作品に取り組んできたアニメーターで「耳をすませば」(95年)の監督、近藤喜文さんと手掛けるつもりだった。

 しかし、「山の向こうに青い海が見えるような、そんな気持ちを表現したいと言っていた」という近藤さんは今年1月21日、大動脈りゅうのため47歳で死去した。告別式の会場で若手社員は「近藤さんは、肺が一つないんです。『片肺』で仕事をしてたんですよ」と語り、高畑勲監督も「君はよく『きょうがだめなら、あしたがあるさ』と歌っていた。過酷な仕事が寿命を縮めたと思うと、いても立ってもいられません」と弔辞を読んだ。合作の夢がついえた宮崎さんが、一番悲しかったはずだ。


「ビンボー伝説」根強いが "アニメ"日本の伝統芸

"絶好調"の裏
 キツい、食えない、安定しない。アニメの製作現場では「ビンボー伝説」が根強い一方、最大手の専門学校「代々木アニメーション学院」によると、就職難をよそに「ゲームソフト会社を中心に求人は好調」と言う。そんなアニメ業界の裏側を、映画「ルパン三世 カリオストロの城」やテレビシリーズ「ムーミン」「未来少年コナン」で作画監督を務めたベテランアニメーターの大塚康生さん(67)に聞いた。

 まず、「ビンボー伝説」の源をたどると、製作者側のコスト削減に行き着くようだ。「例えば、テレビアニメの製作費が1本800万〜1000万円とすると、製作会社はとても予算が足りないため、商品化料や再放映権料でなんとかバランスを取っているのが実態。売れた分だけもうかるオリジナルビデオの発売が増えたのもそのせい。だから下請け作業は当然コストの安い韓国、中国、東南アジアなどに発注し、最近は企画立案まで手掛ける例もある」。現役を引退し、現在は同校アニメーター科の最高顧問講師を務める大塚さんは、電化製品並みに国際化の進む現状を明かす。

 製作現場で絵を描くアニメーターは役者や作家と同じ才能勝負だ。5人のうち4人はアシスタント的な役割の「動画マン」として就職できるが、月額の収入は9万〜15万円程度。「原画マン」と言われるアニメーターに昇格してやっと20万〜30万円の収入が確保できるという。「確かにプロの肩書は取りやすい職場だが、すべては才能次第。サラリーマンのように就職したら世間並みの給料がもらえると思うのは間違いだ」と大塚さんの指摘は厳しい。

 巨大化するアニメ業界自体にも課題はある。「作業が細分化され、宮崎さんや私のように全工程を知ってる人がいなくなった。全体を知らないとリーダーが育たない。そして、テレビ局や広告代理店の担当者もアニメ世代なので、よけいな口を出すようになった」と分業化の徹底と製作者側の過干渉を問題視する。

 「現場でストーリーが変えられない。官僚化して下からの面白いアイデアを拾う能力がない。米国との違いはここ。実際、腕のいいアニメーターには『好きなことをしてくれ』と引き抜き話が舞い込む」と力説する。大塚さん自身、スポンサーや製作者側の度重なる介入に嫌気が差して、降りたことがあるという。

 ただし、アニメ人気の行く末を心配する気持ちはない。「アニメは実に日本的な芸術なんです。平安時代の鳥獣戯画、江戸時代の浮世絵。線を描き、色を塗る芸術は日本の伝統文化で、得意芸なんですよ」(当該記事より)


宮崎駿監督の略歴

 1941年東京生まれ。埼玉県所沢市在住。学習院大政治経済学部を卒業後、漫画家を目指す。64年以来、アニメ製作会社数社を経ながら、テレビや映画でアニメーターや演出家として幅広く活躍。85年、中央線東小金井駅近くのスタジオジブリ(小金井市)の設立に参加。「自然が残り、ぽつんと忘れ去られたような場所」と宮崎氏自身が気に入り、選んだという。同社は昨年、約600億円の債務を抱えた徳間書店(港区)へゲームソフト会社などと共に合併された。

 演出や作画などで携わった作品群をたどると、ムーミン(69年)▽ルパン三世(71年)▽アルプスの少女ハイジ(74年)▽未来少年コナン(78年)などの人気テレビシリーズや映画「ルパン三世 カリオストロの城」(79年)も。

 映画「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」では自然と人間との葛藤(かっとう)を描きエコロジカルな視点が注目された。もののけ姫、「となりのトトロ」が毎日映画コンクール日本映画大賞を受賞するなど、作品の質に高い評価を受けている。もののけ姫というタイトルは内容は違うが、80年にはすでに企画の中で登場していたという。






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