神奈川県立生田高等学校(4)


 愛って何だろう?−−庵野監督はテレビアニメ「彼氏彼女の事情」の脚本を書きながら悩んでいます。前回は生田高校のみなさんが一緒に愛やセックスについて考えました。実は庵野監督は高校時代、女の子と付き合いはなかったんだって。では何をしていたのでしょう。監督の青春物語、青春論を−−。

宮負 高校生の時、だれかと付き合ったことありますか?

庵野 高校のときね、付き合わなかったんですよ。マンガや天文、あとはアニメ見たり、マージャンやったりだったんですよ。テストのときなんか、友達のところで試験勉強やるって親に言って出て行って、そのまま徹マン(徹夜でマージャン)やって、それでそろそろ学校へ行くかって、ちょっと仮眠して、とりあえず試験が終わったらマージャンしに帰る。アニメとマージャンばっかりだったな。女は当時、うっとうしくて避けてました。

一同 ヘエー。

庵野 中学のときにちょっと疑似恋愛ごっこみたいなのやって、当時のマブダチと三角関係になって、修羅場になった。「こんなうっとうしのはいいや」って高校3年間、恋愛はしなかったんですよ。高校のときは言い寄ってくる後輩とかいたけど、相手にしなかった。女よりも面白いものが周りにいっぱいあった。映画作ったりするほうが、女の子と付き合ったりするよりは当時は面白かったんですよ。今にしてみれば、「しまった」と。あのときセックスとかやっていればもうちょっと人生変わっていたかもしれない。

一同 (笑い)

庵野 今の高校生なんかいいですよ。僕らが高校のときっていうのは、大学のときもヘアヌードなんて世の中なかったですから。今はいい時代だと思いますよ。

大久保 いいといえばいいし、悪いといえば悪いし、なんか今ゆとりがないとういうかあわただしい。

庵野 情報がはんらんしすぎてるけど、まあ、いらない情報をカットする術を手に入れれば、順応できると思いますよ。最初はどれもこれも並んで見えて、どれもこれもやらなきゃって気になると思うけど、そのうちやらなくてもいいこと見つかっていくるから。サラリーマン暇そうでしょ? やらなくていいことのほうが多いですよ。大学入ったら、すぐ実感しますよ。

大久保 朝、登校してるとき、人波とか見てると、駅の入り口とか、ただ歩いているのを見ると、ゆとりないなっていうか、ほかにもうちょっとなんかあるんじゃないかなって思う時がある。

内田 ゆとりがないって思うときも、考えてみればあるけど、暇な時間も見つかる。でも今、私の場合だと進路どうしようってゆとりがない。

「大学で大切なのは友達」

高橋 大学は行った方がいいですかね。

庵野 大学は行かないより行った方がいいですよ。モラトリアムはあった方がいいですよ。大学で一番いいのはね、社会出たときに役に立つって言うと変なんだけど、自分の力になってくれるのが大学の友達。

一同 (うなずく)

庵野 俺の場合もそうなんですけど、大学出たら、入る会社はバラバラになるけど、大学時代の友達のツテで、友達が勤めている会社とコネができる。大学時代に出来る友達は大切にした方がいいですよ。社会に出てからは、友達ってそうそうできるもんじゃないですから。利益がからんでくるし、友達というよりは仕事仲間になっちゃう。そういうのを抜きに最後に友達ができる場所が大学だと思う。

一同 (また、うなずく)

「4年遊んで世界広げる」

庵野 仕事やっていても友達はできるけど、業界内に限られる。大学では人のつながり、世界広げる最後のチャンスですよ。行けるならいった方がいいですよ。親の金でもう4年遊べるって。

高橋 がんばります。専門学校はどうなんですか。

庵野 専門学校はおすすめしない。専門学校は行くとみんな初めからその専門分野じゃない? すぐになれ合いが始まるんです。例えば、アニメの専門学校行くと、今まで世間とかクラスからはみ出ていた人たちが一同に集まるわけです。だから、世界が自分たちを中心に回っているような錯覚を起こすんです。アニメを好きってことで、そこで身に付いた技術が役に立つかって聞いたら、そういう人今まで見たことがない。

一同 (うなずく)

庵野 専門学校系はおすすめしない。4年遊んで決めたほうがいい。バイト始めて面白ければ、大学をやめてしまえばいいし。

高橋 大学には行こうかなって思っていたけど、何しに行くんだか分からない。

庵野 遊びに行くんですよ。

高橋 そうします。

(毎日中学生新聞8月6日号より転載)


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