明治大学付属中野八王子中学校・高等学校(5)


 前回までずっと聞き役だった庵野監督が生徒たちの学生時代、仕事のことなどの質問に答えてくれました。

「中学校まで優等生」

庵野 中学までは一応、優等生やっていたんです。学級委員とか欠かさずやっていたんです。高校までは地元で一番いい進学校に入れたんですよ。受かってからはこれで勉強しないと誓った。勉強しても面白くないから、必要最低限、面白い学科とセンテンスのところだけ勉強した。だって数UBとか役に立つはずがない。

川上 数UBなんか何のためにやるんだろうね。

竹迫 そういう教科多いよね。

庵野 楽しい教科は別に勉強じゃなくても面白い。テストの点も0点の時もあれば99点のときもあって……。

 0点あったんですか? 俺もですよ。

市川 うれしそうに言うなよ。

一同 笑い

庵野 0点取ると一応進学校だったんでうるさいんですよ。だから赤点取らないようにしてた。高校入ったら、麻雀とか、8ミリ映画とかそんなのばかりやってました。
高校3年間遊びほうけてましたね。当然入れるような大学もなくて、大阪芸大って当時学科試験がなくて実技のみだったんで入ったけど、結局3年目から行かなくて、放校処分になった。

市川 波乱万丈ですね。

川上 やりたいことやってすごくいいと思う。

曽根 うらやましい。

庵野 それでもそれなりのリスクは大きくなりますね。

川上 でもそれで今、やりたいことやってらっしゃる……。

庵野 あんまり学校の試験関係ないよ。

川上 勉強だけが大事じゃない?

竹迫 真似できないって感じ。

川上 やっぱり先のこと考えるとね。

竹迫 最低ラインはやっておかないと。

庵野 結局、世の中数字でしか見てくれないですからね。映画も面白いか面白くないかは二の次で当たるかどうかが必要。学校の成績も映画と同じです。日本は減点式のテストしか評価の方法を持ってないから。加算式のテストならまだ面白いと思うんだけどね。結局、ミスをいかに犯さないかっていうシステムですよね。最高点は100点って決まっている。いかにミスを少なくして、点数を減らすのを阻止するかというゲームなんですよ。問題があるとすれば減点式のシステムだと思うんだけど、かと言って加算式にできるかって言ったらこれがまたできない。

川上 成績も10段階しかないもんね。

庵野 11ってことはない。

川上 マイナス1ってこともないし。

知識 ゼロはあるのかな。

庵野 ゼロはその規範のシステムから出て行ってくれってこと。だからゼロはあるんですよ。学校は社会のシステムのひな形で、学校と世間の大きな違いってお金が絡むか絡まないかしかない。学校だとテストのいい人間がちやほやされるけど、社会に出たら、テストのいい人間よりも金を産む人間のほうが重宝される。

「『頭がいい』今の高校生」

竹迫 今の女子高生についてどういう考えをお持ちですか。

庵野 明らかに僕が高校生だったころとは違うと思いますよ。頭がいい。親も含めて周りの大人を見て、自分の人生が一瞬、見えているような感じ。それでいて楽しんでいる。

川上 アニメを描く上でいろいろな人に会って、話を聞いてると聞いたんですが。

庵野 そんなこと言ったかな。アニメと漫画って完璧にフィクションで絵の世界だから、あり得ないものです。そういうのをやる時に二つの方法があります。夢を見せ続けて最後に現実を教えて落ち着くのと、現実を見せ続けさせて最後に夢で終わらせるっていうのと。アニメは最初から夢で最後まで夢っていうのが多い。これが駄目で、夢に逃げているような感じがするんですよ。日本ってそんな生きるのにつらい国ではない。
いい国なのにまだ夢に逃避するっていうのが「何ごとだ」って感じる。そういうのは特にアニメ好きに多くて、あれが一時期すごい駄目でエヴァンゲリオンもそれがいやだった。とにかく現実見ないで逃げている奴はいやだ。現実を直視すればなんかあるはずなんですよ。せめて自分の周りくらいは直視しましょうって。嫌なものから目を背けないで、嫌なものもとりあえず見ましょう。だから、最後には作品の中でちょっと現実見せたいでんすよ。少なくとも現実が混じっていないものにリアリティーを感じない。次の作品は女子高生を対象にした少女漫画だけど、これも現実の一部です。
(終わり)

(毎日中学生新聞4月30日号より転載)


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