東京都立戸山高等学校(4)


 東京都立戸山高校には規則もやかましくなく、制服はない。庵野監督は「自由な校風で、大学のようですね」と言う。では、参加者はどのように『自由』をとらているのか聞いてみました。

新垣 周りの人を見ていると、自由っていうより、好き放題という感じが強い。何かの原因でみんなの「我」がでてきたっていうような。僕の考える自由っていうのは、中学のころ先生が言った「一人ひとりの自由がある」っていうこと。それはぶつかるところがあるけど、他人の自由っていうのは犯しちゃいけない。自由っていうのはすごい難しいことだって。

石井 自由を守ろうとしたら、約束を守らなければいけない。体育館履きも前の年までは自由だったけど、、私たちが入学した年から指定されるようになった。履き替えるって約束守らなかったから、自由がなくなった。そういうのみんな分かってないんだよね。自由は、約束守らないと、もらえないんだよっていうのが分かってないから、好き放題やって、なくなってから怒る。「君たちあほだよ」って思う。

新垣 分かっている奴も中にはいるとは思うんだよ。やっぱり、戸山って委員会活動とか、いろいろやってきた奴が多いし。

石井 けっこう執行委員とかやったら、分かる思うんだけど、部活なんかに燃えちゃうと、自分の部活さえ活動できれば、っていうノリがあるわけじゃん。

吉岡 自由って言葉、この学園においては、やっぱ大人にみなされているってことだと思うよ。

石井 信頼置かれているっていうか。

吉岡 大人になるっていうのはそれだけ、責任持つってことじゃない。約束されたルールの中でやっていくってことじゃない。その半面で、大人になることは、許されていくっていう舞台を与えられるんだけど、実際はみんな大人になり切れてない。

新垣 中途半端。

末永 でも権利は主張する。

「今の日本を投影している」

吉岡 今の戸山見てると、今の日本が投影されているような気がする。みんなすごい頭はいいし、苦しんだり、何でもやるし、努力もするし、勉強もする。自分のことは何でもできるんだけど、「戸山はどうなろうが俺だけ良ければいいんだ」みたいな感じがあるじゃない。自分が向上するために何だってすてるじゃない? それは裏を返せば、自分勝手。みんな周りを考えない。本当ね、エゴイストの多い学校だなって思う。言葉を変えれば、向上心があるってことだと思うんだけど。

「人のために苦労しない」

石井 自分が自分以外のモノのために苦労するっていうのは、みんなやっていない。

吉岡 だれも、国のためとか、人のためになる仕事とまでは言わない。今の好きな仕事は追求できて、自分の好きなことだけやればそれがいいんだろうけど、自分が暮らす日本っていう国を、だれが守っていくんだって。自分たちが意識していかないと。日本っていう国は消滅するわけよ。自分が生きて来てみてはとくに自然とかすばらしいと思うし、文化とか歴史とかもすごく好きなんだよ。それってなくしていっちゃいけないと思う。

新垣 話が飛躍している。

末宗 まあ小さなものが大きくなっていくって感じだから、まず根底はそこらへんにあると思う。

新垣 そういうことで悩んでいるの僕らだけじゃない。どこの学校でもこんなこと考えていると思う。

石井 日本の将来は暗そうな予感はするけど、自分が変えなきゃっていう危機感はないよ。

新垣 日本はみんな駄目だ駄目だって言ってるけど、だれも何もしないじゃん

石井 結局、口だけいってるだけで危機感もってないから自分がなんかしなきゃっていうのがない。

庵野 いやー賢いわ。日本のひな形だなって、思いますよ。大変良かったです。
(つづく)

(毎日中学生新聞5月28日号より転載)


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