人は、かつて森の神を殺した
人面と獣の身体、樹木の角を持つ森の神・シシ神を
人は何故殺さねばならなかったのか−
この時代、人間がふえ、多くの原生林が拓かれたとはいえ、
まだ人を寄せつけぬ太古の森があちこちに残っていた
それぞれの森は、猪や山犬など
巨大で賢かった獣たちが必死になって守っていた
そして、聖域を侵す人間達を襲い
荒ぶる神々と恐れられていた
その獣達を従えていたのが、シシ神である
荒ぶる神々を最も激しく戦っていたのは
タタラ者と呼ばれる製鉄集団だった
女の身でタタラ集団を率いるエボシ御前
彼女は己が信念で、森を切り拓いていた
その配下で、御前を敬い慕う、ゴンザにおトキと甲六
シシ神をねらう正体不明の坊主・ジコ坊
北の地の果ての隠れ里に住む老巫女・ヒイさま
乙事主、ナゴの神、モロなど森を守る神獣たち
それに森の精霊・コダマたち…
少女サンは人間の子でありながら
山犬モロに育てられた「もののけ姫」だった
サンは、森を侵す人間を激しく憎んでいた
そして、人間と荒ぶる神々の最後の大決戦に
巻き込まれる少年アシタカ
彼は、死の呪いをかけられたがゆえに
穢れを浄める方法を探しに、旅に出た少年だった
少年と少女は惨劇の中で出会い、
次第に心を通わせてゆく
ふたりが憎悪と殺戮の果てに
見いだした希望とは何だったのか
少年と少女の愛を横糸に
シシ神をめぐる人間と獣たちの戦いを縦糸に
波瀾万丈の一大叙事詩が、展開されていく…
(プレスシートより)
原作・脚本 :宮崎 駿
製 作 :氏家齊一郎・成田 豊
製作総指揮 :徳間康快
プロデューサー:鈴木敏夫
製作担当 :奥田誠治
監 督 :宮崎 駿
作 画 :安藤雅司
美 術 :山本二三・黒田 聡
:田中直哉・武重洋二・男鹿和雄
色 彩 :保田道世
撮 影 :奥井 敦
音 楽 :久石 譲
主題歌 :米良美一
声の出演
アシタカ :松田洋治
サ ン :石田ゆり子
エボシ御前 :田中裕子
ジコ坊 :小林 薫
甲 六 :西村雅彦
ゴンザ :上條恒彦
ト キ :島本須美
タタリ神 :佐藤 允
牛飼い :名古屋章
モロの君 :美輪明宏
ヒイさま :森 光子
乙事主 :森繁久彌
あらすじ
中世から近世へ移行しようとする時代の日本には、まだ人を寄せ付けない太古の原生林が残っていました。そこには、ふるくから人間の言葉を理解する山犬や猪などの大きな獣たちが住んでおり、人間たちから森に潜む獣たちを荒ぶる神々として怖れられていました。その獣たちを従えていたのがシシ神で、聖域たる森林を守っていました。
しかし、人口が増えてきた人間たちは原生林を切り開き、自分たちの世界を作ろうとしていました。
「もののけ姫」は、このような背景のもとでくり広げられる神と人との一大冒険時代活劇です。
主人公のアシタカは、大和朝廷との戦いに敗れ、東北の山里に潜み暮らしている、かつての王家の血を引く少年であり、次の長とされていました。ある日、アシタカの住む山里に猪神が村に襲いかかります。アシタカは村を救うべく猪神に戦いを挑みますが、怒りと憎しみでタタリ神と呼ばれる"もののけ"と化した猪神に、死の呪いをかけられてしまいます。
アシタカは、ただ死を待つよりは自らの己の運命を見定めるため、旅に出ます。それは、呪いを解くためでなく、何故彼が呪いを受けなければならなかったのかという理由を確かめるためでした。
アシタカは、東国にある山里から西へ向かいました。そこでアシタカは、ジゴ坊と名のる変わった男と出会います。ジゴ坊はアシタカの朱塗りの椀を見て、古の民を思い出し「東のはてに、アカシシにまたがり石の矢ジリを使う 勇壮なる一族ありとな・・・・・・・」と呟きました。
そして、西の方角に"シシ神の森"がある事を知ったアシタカは、その森を目指すことにしました。その途中、川辺でアシタカは一人の少女、サンと遭遇します。彼女こそ、人間の子でありながら山犬"モロの君"に育てられた「もののけ姫」でした。
この少女の後ろには、白く巨大な山犬の姿がありました。アシタカは、この少女こそ"シシ神の森"を知っていると直感し、声をかけます。しかし、サンは、森を侵す人間を激しく憎んでいましたので、人間であるアシタカには敵意に満ちた視線を返すだけでした。
アシタカは、同じ川辺で怪我をしている男達に出会います。彼らは、あの白くて巨大な山犬に襲われたといいます。アシタカは、彼らの里、エボシと呼ばれるタタラ製鉄の村に招待されました。
そのタタラ製鉄集団は、"エボシ御前"という女性が率いていました。エボシ御前は、森から神々を一掃し、そこを人間中心の豊かな土地に変えようと考えていました。彼女は、売られてきた女や虐げられてきた男達を集めて鉄を打っていました。
ところで、"シシ神"には、不老不死の力が備わっているとされていました。大侍たちは、この"シシ神"の首を狙おうと暗躍していました。かくして、"シシ神"とサン、エボシの人たち、大侍達を巻き込んだ、三つどもえの戦いが始まります。アシタカとサンは、そのような戦いの惨劇の中で再び出会い、次第に心を通わせていきます。
しかし、山をめぐる戦いは激しさを増し、神々はただの荒ぶる野獣と化します。サンは、タタリ神と化す神を鎮めようとしますが、"もののけ"と化したタタリに呑み込まれてしまいます。アシタカは、死を覚悟でサンの救出に向かいました。
物語は大混乱の中に終局へ。その中で、二人が見いだした希望とは何か…。
プレスシートより、「もののけ姫」解説
いま冒険活劇といえば、アメリカ映画と相場は決まっています。膨大なお金をかけて派手な見せ場を作り、アメリカ人の主人公が活躍する。日本人はただそれを観るだけ。いつからこうなってしまったのか。また、デジタル技術の進歩によって、近年のハリウッド製アクション映画はどんどん見世物化が進んでいます。見せ場のためだけの見せ場。いっときの興奮はあるでしょうが、はたして真の感動は!?
宮崎駿原作・脚本・監督による最新作『もののけ姫』は、こんな状況に敢然と挑む野心作です。『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』など、宮崎作品にも冒険活劇はありました。しかしいずれも無国籍のファンタジーです。『もののけ姫』で宮崎監督が選んだ舞台はなんとこの「日本」。日本を舞台に、果たして冒険活劇は成立するのか。製作費、製作期間ともに従来のスタジオジブリ作品の倍以上をかけた本作は、日本映画界久々の、日本人の手による一大娯楽冒険時代活劇なのです。
魂を揺さぶる波瀾万丈の一大叙事詩
物語は、中世の枠組みが崩壊し、近世へ移行する混沌の時代を舞台に繰り広げられる。この時代、人間が増え、多くの原生林が拓かれたとはいえ、まだ人を寄せつけぬ太古の森があちこちに残っていた。照葉樹と呼ばれる常緑の暗く黒い森では山犬や猪、それに鹿などの獣達が巨大で賢く、人語を解し、聖域を侵す人間を襲い、荒ぶる神々として恐れられていた。
主人公は、大和朝廷との戦いに破れ東北の山里に潜み、そこで何百年も暮らしている、ある一族の王家の血を引く若者アシタ力。彼は、怒りと僧しみによって、タタリ神となってしまった猪神に死の呪いをかけられ、その謎を解くため旅に出る。そして訪れた西の国で、荒ぶる神々と人間達との壮絶な戦いに巷込まれていく。
神々を森から一掃し、そこを民のための豊かな土地に変えたいと考えている、タタラ製鉄集団を率いたエボシ御前。彼女は売られた女達や虐げられた男達を集め、人間中心の社会を作りながら、鉄を打っていた。
それに対し、人間の子でありながら人語を解する山犬に育てられたもののけ姫・サンは、神々とともにタタラ集団と戦っていた。そこでは双方が己が信念を正義だと信じていた。工ボシ御前は人間が生きるために森を拓き、神々は自分達が生きるために森を守ろうとした。どちらの味方につくべきか、迷うアシタカ。さらに、この戦いに不老不死の力が秘められているというシシ神の首を狙う正体不明の坊主ジコ坊たちが絡み、三つ巴の戦いになっていく。
少年と少女は惨劇のなかで出会い、心を通わせるが、山をめぐる戦いは凄惨なものとなり、大殺戮が始まった。ただの野獣と化す荒ぶる神々。サンはタタリ神と化す猪神を鎮めようとし、タタリに呑み込まれてしまう。アシタカは死を賭してサンの救出に向かう。そして、物語は大混乱の中に終局へ向かって突っ走る…。
声の出演は、主人公の少年・アシタカに松田洋治。もののけ姫・サンに石田ゆり子。荒ぶる神々と最も激しく戦うタタラ集団を率いる冷静沈着な女性・エボシ御前に田中裕子。その部下のゴンザに上條恒彦、甲六には西村雅彦。そして老巫女・ヒイさまに森光子。シシ神をねらう正体不明の坊主・ジコ坊には小林薫。大物俳優、個性派俳優が勢揃いです。そして、人語を操り人間と激しい戦いを繰り広げる荒ぶる神々の声を演じるのは、森繁久彌(年齢500歳の猪神・乙事主)、美輪明宏(サンの育ての親である300歳のメス犬神・モロ)と異色の顔合わせが実現しました。
音楽は、宮崎作品にはなくてはならない久石譲。そして「アシタカの心の内を描いた」(宮崎監督談)映画の主題歌"もののけ姫"を、世界的に有名な力ウンターテナー(裏声を使ってテノールより高い音域の声を出す男性歌手)の米良美一が歌います。
日本からのメッセージ
ますます混沌の度合いを深めるであろう21世紀に向かって、宮崎監督はこう言います。
「世界全体の問題を解決しようというのではない。荒ぶる神々と人間との戦いにハッピーエンドはあり得ないがらだ。しかし、憎悪と殺戮のさ中にあっても、生きるに値する事はある。素晴らしい出会いや美しいものは存在し得る。」
宮崎監督が持てる情熱のすべてをそそき込んで、最も過激かつ空前のスケールで描き出す感動の一大叙事詩『もののけ姫』。ディズニーによる世界配給が決定している本作は、世界に対する日本からのメッセージでもあります。
構想16年、製作期間3年、直接製作費20億円、史上空前のセル画枚数13万5 千枚。宮崎駿の最新作にして、スタジオジブリ最大の超大作『もののけ姫』がいよいよこの夏、全世界注視の中、その全貌を現します。