★「もののけ姫」公開されました。 1997/08/06更新
1997年7月12日より、いよいよ「もののけ姫」が全国で公開されました。舞台挨拶が行われた有楽町・日劇プラザ前では、前日の昼過ぎから行列が出来始めました。そして、500人もの徹夜組が出たほか、早朝も電車が到着するたびに行列が増えていきました。
この日は朝からあいにくの雨天であったにもかかわらず、朝6時には1000人、7時には2000人もの行列がビルを取り囲みました。異例の混雑のため、9:00AM開場、9:30AM開映の予定も繰り上がることとなり、早くも6:40AM頃から入場がはじまり、7:30AMに第1回の上映が始まりました。そして、宮崎監督の舞台挨拶も当初1回だけの予定でしたが、2回行われることとなりました。
「もののけ姫」看板と徹夜組 |
日劇プラザ前の状況(5:30AM) |
舞台挨拶
舞台挨拶をする宮崎監督
「もののけ姫」制作にまつわる話を淡々と話しました。
会場を埋め尽くした満員の観客から、盛大な拍手が何度も送られました。
日本テレビアナウンサーの福沢朗氏より紹介を受ける出演者。
左から松田洋治、石田ゆり子、宮崎監督。
この舞台挨拶の席上で、セル画の実際の使用枚数が
14万4000枚に上ったことが明らかにされました。
また、徹夜組の数は500人、7:00AMの時点で2000人が列を
作ったことも併せて報告され、歓声があがりました。
挨拶する宮崎氏。奥は福沢朗アナ |
客席500人、立ち見200人で超満員の館内 |
リンク
舞台挨拶第1回詳報ホームページ(by
Kozaki Kazutaka )へ
舞台挨拶第2回詳報ホームページ(by
Noriyuki Arisaka)へ
舞台挨拶は成功だったか (少し辛口) 「もののけ姫」で観客の笑いを誘うシーンは、少なくとも2カ所あります。 ひとつは、川に転落した牛飼いをアシタカが救出してタタラ場へ移動する際に通り抜けた森の中のシーン。コダマがアシタカ達のマネをして、おんぶにだっこで走り抜けるかわいらしさは、思わずくすくす笑いが漏れてしまいます。 もう一つは、山犬の子がサンに「あいつ食べていい?」と聞くシーン。その先にはヤックルが遠くおびえながら立っている。ヤックル=エサという落差に、観衆はドッと沸き上がります。 試写会を見られた方なら、多分この笑いに心当たりがあるのではないかと思います。また、一般向け試写会に先だってマスコミ関係者だけを招待して行われた試写会でも、全く同じところで笑い声が漏れたと言われています。いわゆる客層が異なっても、映画を見に来た目的が異なっていても、スクリーンに集中しておれば同じシーンで笑いが誘われることを意味しており、これは大いに注目されるべき点だと思います。 さて、公開初日。有楽町・日劇プラザ。舞台挨拶有。 全くなかったんです。笑い声が。どこからも。どうして? 大勢の徹夜組、長大な行列、9:30AMから上映の予定が何と2時間も繰り上がるほどの熱気に包まれ、幕が上がると同時に盛大な拍手が会場全体に響きわたり、これ以上ないという位の期待と興奮の中で上映が始まったはずなのに…。 その原因は次第に分かってきました。要するに、みんな上映後に予定されている宮崎監督の舞台挨拶に気をとられていて、スクリーンに注目していなかったんです。ソワソワしていたんです。笑いを誘うシーンを見逃すか、笑う余裕をなくしているほど、会場が一体となっていなかったんです。この日の3回目の上映や他の劇場では、先のふたつのシーンは大いに沸き上がったといいますから、その差は一層際だちます。 上映中なのに交代で席を立つ人。録音用MD交換のためにカシャカシャ音を立てる人。カバンの中にミニライトを突っ込んで機材をチェックする人。ラストが迫って、スタッフの間をすり抜けてスルスルと通路の間に陣取る人…。懐にカメラを忍ばせて。 日劇プラザは決して大きな劇場ではありません。第1回の上映に入れた人のほとんどは徹夜組です。何のための徹夜? 大胆に言い切ってしまえば、この回のメインは舞台挨拶であって、スクリーンに映し出される「もののけ姫」ではないのです。違う? 目当ては宮崎監督であって、映画の方は後日ゆっくりと見に行けばいいんだという会話を聞いてしまったぞ私は。 で、上映が終わると再び盛大な拍手の嵐。でも、これはもしかしたら映画に対する称賛というよりは、「早くコイコイ宮崎監督!」という催促の拍手だったのかもしれません。 宮崎監督が舞台に出てきました。盛大な拍手と、フラッシュの嵐に迎えられて。 監督は、とつとつとですが、しっかりとした口調で語って下さいました。しかし、内容は既に知られたものに終始し、この舞台挨拶のためだけに出てきた言葉というものはありませんでした。 そうですよね。わざわざ舞台挨拶なんかしなくても、いま巷の雑誌に掲載されまくっている各種インタビュー記事の方が、よっぽど詳しく述べられています。「もののけ姫」がたった今上映された後に、監督が舞台に立って、一体何を付け足す必要がありましょうか。何を補足する必要がありましょうか。監督たるもの、映画の中で全てを表現するのであって、舞台挨拶で語るべきことなど何もなくて当然なのです。 もちろん、映画に集中して見ていた人も多いでしょう。しかし、会場全体が一体とはなりませんでした。舞台挨拶が気になるあまり、肝心のスクリーンに注目出来ないとしたら、本末転倒ではないでしょうか。この模様はスポーツ新聞で大々的に取り上げられるはずですが、その実態はいかほどのものでしょう。 これでは、宮崎監督はまるで徹夜組の客寄せトトロ、見せ物じゃあないですか。会場が盛り上がれば盛り上がるほど、世間が騒げば騒ぐほど、宮崎監督と観衆の距離が開いていくような気がします。そう感じるのは私だけでしょうか? 監督がナマで見られる舞台挨拶が目当てでもいいんです。でも、監督が心血を注いで制作した映画こそ、しっかりと見なければいけません。一流の作品には、それにふさわしい鑑賞態度が求められると思います。 |
★「もののけ姫」一般試写会はじまる 1997/07/02
1997年6月20日より、「もののけ姫」の一般向け試写会が全国各地ではじまりました。(写真は6月27日東京・千代田区公会堂。)開場1時間以上も前から行列が出来はじめ、入場直前には長蛇の列が伸びていました。上映が始まると、それまで騒がしかった場内は静まり返り、観衆はスクリーンに映し出されるシーンの数々をひたすら見入っていました。
作品の出来映えについては様々な意見が出ているようですが、ともあれ、7月12 日への封切りへ向けて、否が応でも期待が高まってくるような雰囲気でした。
★「もののけ姫」完成、関係者に初公開 1997/07/01
構想16年、製作3年に及んだ「もののけ姫」の1997年6月中旬、いよいよ完成し、6月18日から東宝本社8Fの試写室において、マスコミ向け試写会が行われました。
延べ1週間、20回を越える上映の予定が組まれ、記者、ジャーナリスト、業界関係者などが招待されました。
特に拍手もなく、全般に淡々と上映が進行していったとされ、とかく熱気に包まれがちな一般向け試写とは異なる趣でありました。でも、それは決して「もののけ姫」に対する印象が悪かったわけではありません。記者はひたすら客観的に見なければなりません。業界関係者はいわばライバルですから、仕上がり具合など、専門的な視点から見ようとします。要するに、彼らは業務の一環として「もののけ姫」を見に来ているのであり、少なくともタテマエ上は、それを楽しみもうとしている訳ではありません。特にライバル会社の人たちの置かれた立場はそうでしょう。あの試写室で拍手などしては彼らの負けを認めることになってしまうのです。(既に負けているかもしれないのですがね。)
ですから、この試写室で拍手がなくてもむしろ当然であり、ある意味ではそれが「もののけ姫」制作スタッフに対する敬意の表明であるとも言えます。
この試写会を見たと思われる報知新聞の記者は、 翌19日付の記事 で「もののけ姫」に関する大々的な報道をしました。