前回に引き続き、大塚康生先生のジープCD-ROM画集「OHTSUKA YASUO MILITARY 4×4 GRAFFITI」発売記念としてCD-ROM画集打ち上げ会直前の大塚先生と貞本先生の雑談をレポート。日本屈指の軍用車輌研究家であり、また「ルパン三世」「未来少年コナン」等のアニメーターとしても有名な大塚先生と貞本先生の雑談をお楽しみください。






僕はいまだにやってみたいなと思いますよ、アニメ。隙あらば(笑)。(貞本)
ちょっとはいいけど、ずっとやると白髪になるからね。(大塚)

大塚:貞本君っていうのは、ずるい人でね。まずテレコム(アニメ制作スタジオ)に入ったんですよ。(大塚先生は、テレコムで新人指導をされております)

貞本:(笑)いきなり痛いところを。

大塚:それでね。その年(第6期生)は、僕は「教えない」っていう方針だったんですよ。新人はすべて自分でキャラクターを作って、自分で勝手に動かしていいって。そうしたら教えるどころか、こちらが教わりたいくらい上手い絵を描く人がいてね。これは「素人のはずがない」「いや、素人です」ってね。あとで白状して「大阪でやってた」(ダイコン・フィルムのこと)って。それが、やっていたじゃ済まないくらいのレベルなんですよ。僕もアニメーションは40年になりますけれど。新人養成で教えてて、僕が先生ってことになっているけど、まるで教えた覚えがないっていうのが、何人かいるんですよ。宮さん(宮崎駿さん)、貞本君とかですけど。全然教えなかったんですよ、勝手に自分で描いていた人達で。

貞本:いやもう、勝手にお手本にしていましたから(笑)

大塚:それでテレコムには、はじめから入る気ないんですよ。「養成」っていうのが、どういうものか見ておきたかったっていうんですよ。

貞本:作画の現場そのものを見たかったんですよ、本当に。

大塚:同級生がふるえあがっていたんですよ。こんなに上手い人がいたら、僕らは一体どうなるのか、ダメなんじゃないか、と。

貞本:いや、そんな。

大塚:同級生に田中達之君っていうのがいましてね(「王立宇宙軍〜オネアミスの翼」「ふしぎの海のナディア」に原画・ストーリーボードとして参加されています)。その田中君が「負けるもんか」って闘志燃やして。貞本君が横走りで必死に走る青年刑事っていう「太陽にほえろ!」みたいな絵を描くと、田中君がそれを追っかけている感じの中年の絵を描いたんですよ、ちくしょう、ちくしょうってね。

貞本:そうそう、追いかける中年みたいの描いていましたね。

大塚:後で聞いたら、彼らと同期で、ジブリで今「もののけ姫」の動画チェックをやっている人がね、頭の中真っ白になったって。このくらい上手くないと駄目なのかって。だから全体のレベルが上がっちゃって。その時にいた滝口君は、いまテレコムの合作でキャラクターデザインやっていますけれど、上手くなった。だからテレコムの6期生っていうのは全体に底上げして。あの頃、フラフラになってついてきた人に横堀君っていう人がいましたけど、やっぱり上手いですね。

貞本:横堀君は、実はあの中では一番上手いんじゃないかと思っていたんですけれど。

大塚:どちらかというと、地味だったですね。

貞本:いや、地味だけど何か・・人の動きが、何ていうんですかね、生きてるようにみえるっていう。派手さはないけれど。

大塚:そうですね。でも、やっぱり貞本さんと九州からきた田中君。抜群でした。

貞本:田中君、いまやっていますよ、4℃(大友克洋監督のアニメ制作スタジオ)で。

大塚:上手いでしょう。

貞本:上手いですね。僕はアニメーター半分廃業しちゃったけど。彼は上手いですね。

大塚:絵の上手さが先にくる人だから。出来るだけ止めて見せたいっていう、そういう絵なんですね。密度のある。

貞本:でも、僕はいまだにやってみたいなと思いますよ、アニメ。だから、隙あらば(笑)。こないだ劇場版エヴァのほうでも、ちょっとやらせてもらって。

大塚:(笑)それはいいですよ。ちょっとはいいけど、ずっとやると白髪になるからね。

貞本:ずっとやると・・。この状況で、ガイナックスで「ちょっと原画をやる」って出来ないんです。作画監督とか、責任職を任されて。それがちょっと辛い。

大塚:僕も、60歳過ぎてアニメーションは辛い。やるとなれば12時〜1時の世界でしょ。やっぱりこの年齢じゃ辛い。それから、時々描いてみて「あっ、負ける」っていう若い人に出会うから。教える分にはうまくいくでしょ。だからちょっと、ちょっかいを出してね。最近、人を見つけるのがうまくなったんですよ。描かせてみて、この人はうまく描けるようになる、ならないとか。原画は入って2年くらいの間に、ある程度目安がつかないと。4、5年やっても原画を描けない人は、大体描けないじゃないですか。

貞本:でも、最近うまい人が多いですよね。若くて、とんでもなくうまい人が多くて・・。

大塚:多いですね。いまは絵のうまい人が増えているから。またうまい人を吸収してくれるメディアが増えているじゃないですか。ゲームとかビデオとか。

貞本:レプリカが多い、っていうんですか。うまいけど、誰かに似てるっていう人が多い。だから、ポテンシャル的に最初から絵がうまいというよりは、もうアニメイトがうまいとか、爆発を描かせたらうまいとか。誰かのレプリカが多くなっていることは確かだな。

大塚:多いですけれど。そうだな、江戸時代の俵屋宗達とか、襖絵の絵師を例にあげると、ようするに、はじめは狩野派の模倣なんですね。完全な模倣なんですけれど、やがて模倣を超えるんです、ある時期から。だから緻密な筆使い、色使いのすごい職人なんです。職人と芸術家は違うっていうけれど、職人芸っていうのはあるところを超えると芸術なんですね。

貞本:僕なんか飽きっぽいから、この人をワーと真似して、その後飽きちゃって、次の人を真似して。真似を繰り返しているうちに何となく自分が出てくる。

大塚:最後は自分が出てくるから。最後に出てくる自分が勝負所じゃないですか。それが嫌な奴なのか、いい人なのかで違ってくるんだよね。

貞本:うーん。自分のアイデンティティーって何か、って気がつく瞬間が30歳越えると出てくるんですよ。そうすると情けなくなるんですよ。「ああ、こんなものしかないや、俺は」っていう。

大塚:僕なんかも自分が超おっちょこちょいですから、やっぱり人がみても、おっちょこちょいな感じがでてるのが良いって言われているのがわかって。威厳があるとか、かわいいっていうのが駄目なんですよ。ただ、ハマリ役みたいなのがありますよ、40年もやると。ピタッときた企画とかね。ピタッとこない企画もあるけど。

貞本:それ、やっぱりルパンですか。

大塚:そうですね。やっぱりルパンのような、ああいう性格でしょうね。だから「巨人の星」なんかをやったときは、本当に苦痛で。

貞本:苦痛だったんですか、あれは(笑)

大塚:「父ちゃん、俺はやるぜー」ってやっている、あのクソ真面目な少年っていうのは・・。耐え難かったですね。

貞本:大塚さんは、野球はあんまり得意じゃなかったんですか?

大塚:いや、もう全然。

貞本:ですよね。「巨人の星」のオープニングのフォームは、ビデオで撮ったりとか、何か研究して?

大塚:うーん、ビデオは見たけれど。後で出てきた人達が上手かったですね。やっぱり好きなものを描くのがいいですね。

貞本:荒木さんとか?

大塚:荒木さんとか、うまかったですね。今は知らないけど、あの頃はうまかったです。燃えてグァーと出てくるときがあるんですね。若いときに。

貞本:「巨人の星」の頃で幾つくらいだったんですか?

大塚:30代の終わり頃かな。「太陽の王子 ホルスの大冒険」をやったのが34〜35歳頃なんですよ。

貞本:太陽の王子で35歳ですか!

大塚:34歳だったと思う。

貞本:じゃあ、僕が今からアニメ界に入るような感じなんだ。

大塚:そう。宮崎が24歳で大学を出たばかり。それから高畑が29歳。で、僕34歳。

貞本:いや、僕が「身体が追いつかん」って言っていちゃ駄目なんですね(笑)。


  アニメーターは、原画を中心とした一種の戦闘部隊。その辺に人材を貯えておかないとね。(大塚)

大塚:
早い人は23、24歳で描きはじめるけど、円熟期にはいるのは30歳から。僕がアニメーター始めて8年になって、だんだん場数を踏んで、さっき貞本君がいった自分が出てきはじめて、面白くなるのは33、34歳くらいかな。38歳くらいが円熟期で。その時期に、いいチームといい企画と、すごい資金が出会えば(笑)すごいものが出来る。大多数は出会えないけれど。やっぱり低予算じゃ駄目ですよ。

貞本:うちもアニメーターはいっぱいいるけど、基本的に儲からないじゃないですか。で、話をするとなると、コンビニで立ち読みする連載中の漫画の話か、そのくらいの趣味の話しかなくて。最近のアニメーターは、どうしてこう、漫画から離れた趣味の話が出来ないんだろうっていう。

大塚:そうですね。貞本君は昔からクルマが好きだし、オートバイも好きで、転がしているし。

貞本:最近の新人とか若い人で、ジープとか興味を持っている人います?

大塚:いない。

貞本:全然いないですよね。

大塚:ほとんどいない。テレコムでもいないですね。ジブリには、二人ばかりいるらしいけど。やっぱり「NAVI」なんかの影響で、どっちかっていうとブランド志向になりますからね。

貞本:新型車の。

大塚:将来BM買いたいとか。「そういうのアニメーターとして大成しないぞ」って(笑)。「どうやったら大成するんだ」っていうから「変なほう、向かなきゃ大成しない。アニメーションを作るなんていうのは、変じゃなきゃ上手くならないんだ」って。真面目なアニメーション作ってどうするんだって。いま、真面目なアニメーション多いですからね。

貞本:全部一緒になっちゃうからな。アニメも。変わったアニメないですね。

大塚:ないですねー。ほんとに。まあ、ジブリは今度、高畑さんが「山田くん」をやるんですよ。面白い実験だと思っているんですけどね。

貞本:うちもまだアニメ作らなきゃならないのかな。

大塚:勿論です。ガイナックスはね。

貞本:皆ジジイになっちゃって大変ですよ。僕たちが一番若いと思っていたら・・。

大塚:でも、若くてもジジイもいるし、年とっても新鮮な人もいるから。庵野さんのように面白い人がいたら、また何か考えつくかもしれないし。

貞本:(アニメは)時間がかかるのが嫌だといっていました。実写だと、だいたい4ヶ月くらいで作品になってくるんで。あと女優さんとか。一人身でまださみしいんで(笑)。そばに女の子がいないとダメみたいですね、現場に。

大塚:美人を入れればいいじゃないですか。

貞本:ガイナックスのアニメじゃ、そんな人は入らないんじゃないですか。声優さんがいるのに、最近の声優さんでは物足りないのか「やっぱ、女優はいい」(笑)。去年、女子高生使って、実写を撮ったんですよ。

大塚:庵野さんが女子高生に囲まれている写真を見たような気が。

貞本:そう、それで味をしめたらしくて「やっぱ、実写はいい」(笑)。ウルトラマンみたいな特撮の実写をやりたいとか言って。

大塚:でも、ガイナックスとしてはさびしいね。アニメやってもらわないと。

貞本:いま、もう一人の監督でちょっとクルマに興味持っているヤツがいるんですけどね。ま、それがいま次の世代の・・?

大塚:アニメーターは、原画を中心とした一種の戦闘部隊。最前線にいるでしょ。その辺に人材を貯えておかないとね。

貞本:そうなんですよ。いや、それが大きいですよね。だから庵野さんが、どうしてアニメを今一つやる気がしないかって。「このアニメーター使って何かやりたい」と思う、若い人がいない。上手い人がいたら、「なかむらたかしさんみたい(「マーメノイド」他)」とか「森本さんみたい(森本晃司さん、「ノイズマン」他)」とか。上手いんだけど、ちょっと本物におとるレプリカでしかない。すごい個性を持っている人がいない。

大塚:高畑さんなんかも、いまちょっとやり方かえているんだけど。近藤喜文さんが亡くなられたでしょ。近藤さんが戦闘部隊の指揮官だったでしょ。その次を育てることが急務。近藤さんが亡くなられたっていうのは、ジブリにとって一つのエポックだったんですね。それでちょっと危機感を持っていて、僕なんかにも「若い原画に教えて欲しい、講義して欲しい」と。若い原画にカツを吹き込んで欲しい、そういう思いがあるんだと思いますよ。まぁ、話して上手くなるくらいなら、世話はないですから。講演会なんかで上手になる訳ないですけど。まぁ、多少足しになるだろうって、今行ってますけど。

貞本:教えるよりは、今からアニメ界に入っていこう、興味を持っていこうっていう世代がいるじゃないですか。小学校3、4年生くらいの。その人たちに向けて、いいアニメを作るのが一番いいと思いますけどね。

大塚:それが一番いいですね。長い目でみたら、そこから、みて刺激されて育っていきますからね。

貞本:ルパンとかコナンとか。あの辺のジャンルのアニメをしかも安く、テレビで。うちも庵野さんにいつも言っているんですけど、ビデオだったら僕はやらない、と。ビデオはオタクの大人しか見ないから。あくまでテレビか劇場でないと子供が見てくれないから、やるべきでないっていうようなことをいつも言っていますよ。だから、ずっとテレビにこだわってやっているんですけどね。

大塚:サッカーじゃないけど、幼稚園の頃からやっていないと、タレント(才能)がでてきませんからね。

貞本:宮崎さんもそれこそ、プロデューサー側にまわって。テレビシリーズにかかわって欲しいな、とちょっと思いますね。

大塚:テレビシリーズにかかわりたいって言っていました、今度は。

貞本:本人が劇場版アニメを、またやってくれるといいんですけれど。

大塚:同じ発想で、やっぱテレビシリーズやらないと、と言っていました。ビデオじゃ伝播力、それに人材の発掘の可能性がないっていうんですよ。とにかく、いまの(30分番組1本あたり)800万円くらいの低予算で作ったアニメに満足して欲しくない。もうちょっと贅沢にいて欲しい、という感じはあるんです。

貞本:僕らの世代が、コナンだ、ガンダムだっていう最後の世代じゃないですか。だから、まだ作れるけど。じゃ、今の若い人達は何を見て、次を作るんだっていったら、ないじゃないですか。だから、エヴァをみてた世代がもう4、5年したら、エヴァに刺激されて作りたいっていう人がでてくればいいけど。

大塚:でてくるとは思いますよ。それは。

貞本:でも状況的に難しくなってるんですよね。ああいう大人向けではあるけれども、子供も楽しめるっていうのは、ちょっと・・。放送コードの問題とか。なんだかんだいって、なかなかね。

大塚:でもまあ、世の中っていうのは進歩しているから、そんなに後退はしないと、僕は思っているんですけどね。

貞本:なくなりはしないと思いますけどね。このあいだ「クレヨンしんちゃん」をみたら面白かったですけどね。

大塚:「クレヨンしんちゃん」はけっこう、アニメーターがすごいこだわっていてね。演技してますよ。

貞本:すごいんですよ。ああ、こんなところでやっている(笑)。

大塚:やっているんですよ。とんでもないところでね。仕種とか、たたずまいに良いのがあったり。

貞本:でも、ギャグが面白かったですよ。クレヨンしんちゃんが歩いていたら、雑踏の中でみんなが止まっているんですよ。で、「何で最近のアニメみたいに止まっているの?」ってセリフで(笑)。で、皆がワラワラーって動きはじめるのがあって。あー、枚数使っている。いいなぁって。

大塚:(笑)いいねえ。そういう人いるんですね。



新しいものがあれば、似ない方へと選んでもいいと思うんだけど、何にもなければ、いいじゃん似て、って。面白ければ。(貞本)

貞本:ガイナックスも、キャラクターに芝居させたいっていう演出家に、是非次はやってもらいたいなー、と。山賀さんも庵野さんも、人の演技には興味ないですからね。セリフには興味があっても、そのセリフを言うときの仕種とか、そういったのには興味がない。カメラワークのほうに凝っちゃって。だから、紙芝居になっていっちゃうんですよね。まあ、日本人は動かないですからね、そうやって考えてみたら、仕方ないですけれど。リアルに芝居させようと思ったら、動かない方向にいっちゃうから。

大塚:なっちゃうんですよ。御姫様がセリフ言うときに、絶対動かないじゃないですか。「さようでございますか」っていうのも、あれって口パクなんですよね。それが海外と違うんですよね。でも抗議する時、ずーとこうやって親指立てていたら、もう日本人じゃないですからね(笑)。

貞本:やっぱり、登場人物を外人にするとか、ディズニーみたいに動物キャラにするとか、そういう時代がそろそろ。そうしないとキャラが動かせない気がする。リアルに芝居しちゃうと。

大塚:だからアニメーションも、そんなにバタバタ動かなくてもいいから、もう少し効率的な動きだけでも、もうちょっと研究して欲しいっていう。

貞本:「AKIRA」でかなりリアルな芝居をやっていたけど、あれでも日本人の芝居としては動きすぎだな、と思って。むやみに動いているっていうか。

大塚:日本人となると、そんなに・・。ルパンとかコナンみたいな、日本人かどうかわからなくて。無国籍で僕ら、ある程度動かしているんですよね。

貞本:すっごい羨ましいですよね、やっぱり。

大塚:日本人って決めると、非常に難しくなるんですよね、演技が。

貞本:だから、エヴァンゲリオンよりは、前のナディアのほうが動かしていて楽しいですね。枚数は山のように使えたんで。あっちのほうが、やってて楽しかった。現場はもうちょっと笑顔が多かったっていう(笑)。エヴァンゲリオンはもう、現場が悲痛な顔ばっかりで。もう飽きたとか、もうやりたくない、っていう顔ばっかりで。

大塚:ナディアは、けっこうノッてやっていたものね。

貞本:現場は結構ノッていましたよ。

(貞本先生とほぼ同時期にテレコムを退社した柳沼さんというアニメーターについて。柳沼さんは「王立宇宙軍〜オネアミスの翼」「ふしぎの海のナディア」に原画・ストーリーボードとして参加されています)

大塚:彼は、いまどうしているかね。結婚しているの?

貞本:いや、まだですね。一生独身なんだみたいな感じじゃないですか。

大塚:情けないなあ、最近みんな。

貞本:スクウェアの仕事でハワイに1年行くっていうんで、「えー、何で行くの」って聞いたら、「ロータスエリーゼが欲しいから」とかいって。いや、ハワイ行ってお金かせいで、ロータスエリーゼが買える程のお金が貯まったら、帰ってくるのはいいけど。こっち帰ってきて乗ろうと思ったら、仕事がなくなっていたら、維持できなくなるよって話(笑)。

大塚:原画上手くなっていればいいけどね。

貞本:まあ、上手いんじゃないですかね。知らないですけど。

大塚:場数踏んでいるでしょうからね。

貞本:ちょっと絵が、作家さんの絵にあわせるとか、そういう絵じゃないですけどね。動き回るタイプのアニメやると上手いですね。

大塚:僕は長年作画監督をやったけれど、キャラクターが少し違っても面白いほうがいいですね。キャラクターは合わしてやるけど、元が悪いと。キャラクター合わしたってしょうがないもの。

貞本:そうですね・・演技さえ合っていれば、絵乗っけちゃえばいいから。楽といえば楽ですけどね。

大塚:そうですね。

貞本:それやると、ちょっとジブリの宮崎さんっぽくないかなっ、とかなっちゃうんで。わかってて、避けるっていうのがあるから。特に庵野さんとかは「それやると宮崎さんになっちゃうから」「それやると押井さんになっちゃうから」って、似ないよう、似ないようにしないと、自分の個性がだせないっていうところで。

大塚:そこは僕なんかは・・。逃げないで、宮崎さんに似ててもいいから、中身で勝負っていう。中身は、宮崎さんの美意識と違うもので作りたいって考えるようにしている。

貞本:昔、河森さんが「マイム」っていうのをやっていて。で「魔女の宅急便」に似ているから、出来なくなったとか言っていたけど。僕から見たら、似せようと思っても絶対に似ないから大丈夫って(笑)思ったんだけど。だって、河森さんがやる以上は似ないでしょう。まったく同じシナリオ使っても、同じものにならないでしょうって思ったんですよ。

大塚:そうはならないでしょう。構図とかカットの並べ方なんかで似るっていうのが一番ヤバいんですよ。真似だって言われちゃう。特にアイデアはそうですね。宮崎さんがカリオストロ(「ルパン三世 カリオストロの城」)作った後、アメリカ映画の中で、崖っぷちをクルマがシトロエンを押して落とそうとする画があったんですよ。あれは宮崎さんのカリオストロを見て、そのまま実写でやっている訳ね。ああいうのはヤバいですね。ちょっとひねって、違うものにすればいいのに。

貞本:「007」でもありましたね。

大塚:ディズニーなんか、露骨だからね。「リトルニモ」っていう作品で、少年が眠っている間にベッドが空中へ浮いて、旅をするっていうのをやったら、ディズニーのテレビですぐ使っていました。同じ構図で、同じようにしてね。

貞本:「タイタニック」見られました?

大塚:ああ、見ました。

貞本:何かコナンに似てません?すーごい。

大塚:あの船首に斜めに立つところなんかね。コナンそっくりでしょ。

貞本:斜めに立つし。あと船倉に残されて手錠を掛けられて、それを女の子が助けに行くっていうシチュレーションが。それ、コナンじゃないかと。

大塚:コナンなんですよ。だから、向こうの人が見て、いいアイデアだとすぐ取っちゃうでしょ。コナンなんですよね。

貞本:2等客室でしたっけ。下層階級を締め出しちゃって、隔壁のこちらから銃で撃つところなんか、三角塔のシチュレーションにそっくりですね。

大塚:そっくりですね、あの辺は。アメリカっていうのは、「ライオンキング」じゃないけど、平気でさ。

貞本:あとで聞くと、「タイタニック」のキャメロン監督っていうのは、宮崎さんのファンだって聞いて・・。あー、やっぱりコナン見てるな、と。

大塚:影響を受けたっていう言い方がありうるんですよ。違う作品ですよね。テクニックが似ていても、作品自体が違うからいいんだろうけれども。一般の人は、技術的な相似点を言わないから。それ言うと「荒野の七人」なんか、もうまるっきりだもんね。

貞本:「エイリアン」も最初のヤツ見たときは、ボークトの「ビーグル号の航海」にそっくりな話があって。モンスターが唾液を落としたらビーグル号の床をどんどん穴あけて、酸で溶かしていくところとか。わぁ、まったく同じだと。

大塚:宮崎さんの作品でも。ルパンの終わり頃に「アルバトロス」っていうのを作ったんですよ。宮崎コンテでね。その中にロボットがでてくるんですが、それが1920年代のアメリカのフライシャーとデザインが同じなんですよ。コナンやったときにも、コマみたいなカタチの空中飛ぶ機械(フライングマシン)があったでしょ。同じのが昭和10年頃の「少年キング」にでているんですよ。足がついててね。

貞本:ああ、やっぱり(笑)。フライシャーのヤツを後で見たら、構図とカット割まで一緒だったから、あとで困ったとか言ってらしたらしい。あまりの自分の記憶力の良さに、あとでビックリしたと。

大塚:やっぱり真似したっていうんじゃないですね。自分で影響を受けているんですね。モノはちゃんとコナンっていう映画でまとめているのだから、僕はコナンにしろ「タイタニック」にしろ、恐がることはないと思うんですよ。似ていいんです。違うものになりますよ。庵野さんがやれば、庵野さんのものになる。

貞本:まあ、そこで新しいものがあれば、似ない方へと選んでもいいと思うんだけど、何にもなければ、いいじゃん似て、って。面白ければ。

大塚:手塚治虫の全作品が、どっかにあるしね、前が。それで手塚さんの大きさが消える訳ではないと思うんですよ。僕はかまわないと思う。だって、こんなの(と大塚画集を指す)独創でも何でもなくて、全部ジープをスケッチしただけで、本物がある訳ですから。俵屋宗達とかみたいに狩野派の絵描きはみんな真似なんですけれど、それでも芸術っていうのは、職人芸っていうのは、その真似のレベルがだんだん高くなれば、いいものになるんですよね。

貞本:でも、やっぱり大塚さんのデフォルメのセンスがいいですね。キャラクターの。

大塚:僕が描くとね、わずかに漫画的になっているんですよ。

貞本:いや、でも大人っぽい漫画でいいですよ。いま、研究してますよ、やっぱり(笑)昔に戻って。何か最近、自分の描く絵がやっぱりアニメに毒されているなって思うんですよ。

大塚:あー、そうですか。いや、なかなかね。それは大きな壁ですよ。

貞本:抜けきれないっていう。

大塚:でも見えてる分だけ、クールでいいですよ。見えない人多いから。自分でわかっていないのかな、って思うような変な絵描く人がずいぶん・・。

貞本:何かでも・・。こうすれば売れるっていうのがだんだん解ってくるじゃないですか。30歳を越えてくると。でも、そうやると自分のアイデンティティが持たないっていうのがあるじゃないですか。そこがちょっと、難しいところなんですよ。こういう、この手のキャラクター、かわいい女の子描くと、ウケるのは解っているんだけど、これをやるとなーっていう。

大塚:俺じゃないっていう。

貞本:周りと一緒になっちゃうし。

大塚:僕なんか、これ(ジープのイラスト)はね、全部自分の楽しみとして、自分用に楽しんで描いているから。人に見せるつもりは、そんなになくて。ただ、同人誌を作って、そこに載せるとか。遊んだ結果なんですよ。あとで見ると、そういう方がいいですね。頼まれて描いた絵っていうのは、ほとんどないですよ。不思議なもので。

貞本:いいですね、そういうのは。やっぱり(「ルパン三世」の)不二子とかね。同じ女の子描くんでも、ちゃんとキャラクターがあるじゃないですか。あれがいいなと。最近のアニメの女の子は、やっぱ男が作った感じがして嫌なんですよ。理想で固められている感じがして。

大塚:今はね。「女の子」っていう言い方に問題が隠れているんですけど。不二子は自立する女性っていうものを目指したでしょ。男を手玉にとって、独立しているんだっていうのが大隅正秋さん(「ルパン三世」前期監督)の考え方でね。あの頃は新鮮だったですね。今の方が、本当はそれを描くと新鮮なんじゃないかと思うんですよね。

貞本:ええ、そういうのないんですよ。最近のアニメーションは。

大塚:今テレコムでやっている「サイバーシックス」っていうのは、そうなんですよ。映画の中では主人公は男なんです。実は女性なんですけど。あれは面白いですね。アルゼンチンのイラストレーターがキャラクター作ったんですけど。アメリカで放映するんだけれど、将来日本でも放映するのかなぁ。

貞本:いま日本でアニメになっているけれど、ちょっと前にCGでアニメーションを作っている作品があったんですよ、「ビーストウォーズ」っていう。もとはタカラが作っているトランスフォーマー・シリーズってヤツですけど。あれをアメリカのスタッフがやっていたんですけど、それがすごい質が良くて。日本のアニメに毒されていない、向こうの実写をやっていた連中が演出をやっている訳じゃないですか。すごく安心して見れて、昔のアニメーション見ているみたいな感じがして、目を洗われるような気持ちで見てました。あのシリーズは良かったですね。やっぱりCG使っているから、その部分はすごく不自然なんだけど、可能性があるんですよ、画面に。やっぱ、それはいいなと思って。で、あまりにも人気が出ちゃって。CGって時間かかるじゃないですか。だから第2シリーズまでに間に合わなくて。結局いま、日本で普通のアニメーションとして第2シリーズやっていますけど。第3シリーズからは、またアメリカのCGチームでやるっていう。

大塚:アメリカからお金はでているの?

貞本:いや、それはたぶんタカラから直で来て。まあ、タカラとしては自分のところのおもちゃ売りたいから。アメリカのCGチームは、そんな毎週のように作れないっていうんで。向こうは2週間に1回かな、30分番組が。ゆっくりやっていたヤツを、日本で一気に放送したんで、あっという間に追いつかれちゃって。いま準備している最中なんですが、次のシリーズが始まるまであと半年から1年くらいかかるっていっていますね。おもちゃはもう売られているんですけど。

大塚:最近またおもちゃがすごいからね。

貞本:あっ、おもちゃっていったら、最近甲冑マニアになりつつあるって聞いたんですけど(笑)

大塚:昔からなんですけどね。そういうもの読んだり、そういうおもちゃがあれば買ってきて、作ったりしてますけど。

貞本:それは、騎士そのものが良いわけじゃなくて、甲冑がいいんですか?

大塚:騎士も甲冑もいいんですよ。14世紀から15世紀のボディアーマーで。

貞本:いわゆるイギリスの、いわゆるあっちの剣と魔法のファンタジーの世界ですか?

大塚:じゃなくて、鎧もほんとにあったヤツ。

貞本:いわゆるファンタジーには興味はないんですか?

大塚:ファンタジーもいいのは欲しいですね。フランク・フラゼッタのダークライダーっていう、馬に乗った恐い騎士がいるでしょ。あれなんか、スウェーデンの人が原型を作ったんですよ。それ4万円で買いましたよ。色塗ったけど、すごくいいですね。ファンタジーもいいけど、存在感のあるのがいいですね。ですから実在した甲冑のほうがいいです。鎧もそうだけど、バラエティがありますから。ボディアーマーは、パーソナルなものですから。例えば、ヨーロッパの甲冑は、だいたい騎士、領主、社会的地位の高い人が着たでしょ。だから、ドイツの14世紀、15世紀では、一つの甲冑作るのに、いまでいうと軽飛行機1機買うくらいの値段なんですよ。だから庶民じゃ着れないものです。その人の寸法計って、叩いて、30人くらいで1年、2年とかかかって作る訳。出来たときは、その人死んじゃっていたとか、太りすぎで着れなくなっていたとか、そういうのがヨーロッパ全土のお城に保存してあって。それを出してみると、実に絢爛たるっていう。

貞本:当時のヤツって、あれ鉄製なんですか、銀製なんですか?

大塚:鉄です。冷板工法っていって、ようするに板金です。鉄板を温めるんじゃなくて、冷たいままでこう叩いていく。腕が変になるまで叩いて、カタチ出していくんですよ。

貞本:元から鉄だったんですか?鉄の前は金使っていたとか、そういうのはないんですか?

大塚:いやいや、全部鉄板です。

貞本:重たい訳ですね。

大塚:全部着込んで35キロくらいかな。で、召し使いが錆びないように1年中磨いているわけ。錆止めがあるわけじゃないし。

貞本:昔のピカピカしているヤツ。あれ、銀で打っていたのかなってちょっと思いますよ。温めていないということは、ビスとかは、リベットみたいに止めるヤツありますよね、あれとかは穴あけて、そのまま打って、叩いて潰すんですか。

大塚:うん、叩いて。ガス入れると、どうしてもそこから錆びますから。

貞本:部分的に温めるなんてできないですよね、当時は。

大塚:できないですね。ドイツのBMとかベンツ、あるいはフォルクスワーゲンとかの工場は、全部鎧を作っていた工場が、そのまま近代に入って・・。

貞本:イタリアなんかの、木型から打っていくカロッツェリアとか。

大塚:ミラノとか、あの辺りは鎧の産地です。それがいま自動車工場になっている。あの辺にいるコーチビルダーは鎧衆みたいなものですよ。コンコン叩いてカタチを出している訳ですね。それが面白くなると、こっちの方調べたりしますからね。

貞本:そういう板金の技術って、あいだの世代が抜けちゃっていて。最近クルマでも、プレスするじゃないですか。どうしてもシワがよっちゃって、出来ないんだけど。むかしはどうしてシワが寄らなかったんだろうって、スバルの板金とか調べていくと、部分的に手で打ってた(笑)。

大塚:イギリスなんかでは、フェンダーならフェンダーで、大きな木でまず削って、きれいなカタチ出すでしょ。イタリアのコーチビルダーも、コンコン叩いていって、だんだんのばすように叩いていって、それでピッタリ合わす訳ですね。

貞本:板金やると、儲かるかもしれない(笑)。

中山:でも、技術が残っていないのでは。

貞本:だから板金直せなくなっているから、最近クルマが・・。

大塚:直せなくなっている。

貞本:工場でバンとプレスするだけだから。それをぶつけたら直せない、普通の人は。

大塚:しかも、金属の剛性を高めるために昔より複雑になっていますからね。こんなになって、こんなになってさ。いたるところにリブいれているからね。



文化遺産として、安定して何十年も売れますよ、これは。(貞本)

大塚:僕はCD-ROMっていうものが、どんな表現力もっているか、全然知らなかったものですから。始めのうちは何ができるんだか、と思って。そしたら、意外に膨大なものが入るんですね。

貞本:音とかホントはこだわって、本物のヤツとか入れると・・。

大塚:いやいや、入っている。

貞本:あっ、結構入っているんですか?

大塚:マイティマイトとバンタムのエンジン音が入っている。音楽も、中山さんがけっこう凝っててね。

中山:スタンダードジャスを弾く人を探すのが大変で。いないんですよ。みんなモダンジャズで。

大塚:いや、テレコムの女の子が「この音楽はいい、感じがいい」って。

貞本:あー、凝ってやっているんだ。

大塚:けっこう時間かかりましたよね、これは。去年からずっとだから。

貞本:凝るときは凝るんですよ、うち(ガイナックス)のヤツは。

大塚:貞本君は、画集は幾つくらい出しているの?3つくらい?

貞本:うちで出したのはイラスト集1枚。まだ1枚ですね。あと、うちでだしたヤツと、追加バージョンがありますね。一部内容かえて。エヴァンゲリオンが入っていなかったので、エヴァンゲリオン用に描いた部分を足して・・。

中山:このCD-ROM画集に関しては上の方が皆さんミリタリーファンだったんで、上の方の厳しい監修が入りました。内容面で妥協するな、と。

大塚:ホントに、よくやりましたよ。感心しているんですよ。日本でも、イラストレーターの良い仕事っていうのは、こういうカタチで市販したほうがいいですよ。褪色しないしね。それから、入っているキャパシティが大きくて、しかも置き場をとらない。この大きさで済むっていうのはすごくいいですね。コンピューターは発達するに決まっているのだから。

貞本:でも、CD-ROM自体が新規格に・・。あっ、でも書き換えが簡単だもんな。あとあとね。

大塚:けっこう、ガイナックスさんはこだわって、版権とかも、けっこう細かく版権元にコンタクトして。

貞本:あとで大変ですからね。問題が起きると。

大塚:いまはもう大変でね。タミヤさんにきくと、もうハーレーの模型はできないって。ハーレーはすべてにチェックが入って、いちいち金を払わないといけない。

貞本:みんなそうなんですかね。F1なんかも。

大塚:そうですね。昔はベンツなんか、何もいわなかったんですけど、今は非常に厳しいですし。調査取りたての会社があるんで、そこがすぐいってくるんですよ。うちの商品使っていると。

貞本:知名度の割にロータスのプラモデルなんかはでていないから、ひょっとするとロータスなんかは、うるさいのかな。

大塚:うるさいんですよ。ハーレーなんかは、もう売っていない。

貞本:それって、逆にもったいないですよね。やっぱりプラモデルから入る人は多いじゃないですか。友達でも、ロータスヨーロッパとか乗っている人って、最初からクルマに憧れて入った人じゃなくて、むかしの「サーキットの狼」を読んで、憧れて入ってきたっていう。どこが入り口になっているかわからないから。プラモが入り口かもしれないし。

大塚:プラモもそうだし。この間フィアットクラブの人にきいたら、いまのフィアット欲しい人っていうのは、やっぱりルパンから入っているんですよ。ルパンをみて「ありゃいい」っていって、本物にのめり込んでくる。

貞本:もしフィアット社がルパンをみて「ダメだ」っていって、あれがミニクーパーになっていたら、いまフィアット500は人気がなかった訳ですよ。

大塚:そうかもしれません。それくらいメディアが影響力を持っていますから。だから逆の現象で、このCD-ROMがもの凄く売れたら、今度はルパンのおもちゃが欲しい、ジープのおもちゃが欲しいとか、そういう風に波及していくんですよね。メーカーがあんまり高いチャージかけて取り締まっちゃうと損なんですがね。

貞本:やりすぎは問題あり、と。

大塚:著作権は著作権だから。ただ、ジープは著作権もなにもないもの。軍隊・政府が発注したものだから。ホントは著作権が発生しないはずなんですけどね。

貞本:いまのチェロキーとか作ると大騒ぎ。

大塚:そうです、あのジープのクライスラーが「ジープはうちだ、金払え」と。だからやめちゃったんですよ。

貞本:子供の時に買ったミツワのプラモ、持っておけばよかったですよ。

大塚:あー、ミツワ(1/20のMB)はまた売っている。また再販していますよ。

貞本:あの、大塚さんが表紙描いたプラモ。

大塚:あぁ、あのマックス模型のプラモね。いや、あれはない。あの箱で、あのプラモはない。(マックス模型が1973年に発売したフォードGPのプラモデルのこと。同社倒産後に金型はオオタキに移行し、フィギュアを省いて再販された)

貞本:あの軍曹つきのヤツ。あれ、欲しいな。あれ昔持ってたんですよ、僕。

大塚:あぁそう、あれって今何万円ですよ、あったら。

貞本:金型は、どこが持っているんですかね。

大塚:金型は香港に売ったんですけど、香港の工場が逆にインストールしちゃってね。こういう風に、パン(と手を打つ)。これで圧かけたものだから、バラバラに壊れちゃった。

貞本:あらららら。もったいない。あれ、いまあったらどこかで再販すればいいのにな。

大塚:どっかで、そのうち作らせますよ。

貞本:食玩(食料・玩具)みたいに、普通のマーケットで僕は買いましたよ。デパートじゃなくて。「丸九」っていう普通の小さいスーパーがあるんだけど、スーパーの食べ物コーナーみたいなところに置いてあって。あれ、これはガムでも入っているのかな、と。

大塚:昔はよくあったんですけどね。暗いマーケットの狭い所に。

貞本:プラモが普通に売っている(笑)。そこにあって。何かこれアニメ描いてあるな、と思って。

大塚:それ、あなた幾つくらいの時?中学生くらい?

貞本:小学校2、3年じゃないかな。プラモデルに凝っていたころですね。最近の子供はプラモ作らなくなってますよね。

大塚:今日、このCD-ROMは全国で発売なの?

貞本:いっぱい売れるといいですね。

大塚:そうですね。僕は心配ですね。これは。

貞本:客層が違うでしょ。普通の本屋さんのミリタリーコーナーに置くといいですよ。ブックレットにして。文化遺産として、安定して何十年も売れますよ、これは。

大塚:僕が「軍用ジープ」っていう本を出しましたよね(徳間書店より昭和62年5月に発行されるが、現在絶版)。アニメージュが、あれを再版したいといっていました。「どうして?」っていったら、何かジープが盛り上がっていて、三菱がジープをやめるという話で、一つのエポックになっていてね。だから、いまタミヤのMBジープも、よく売れている。

貞本:ミリタリー関係と、あと「4×4マガジン」ってあるじゃないですか(「4×4 MAGAZINE」 1998年7月号 97ページに本CD-ROMの記事が掲載されてます)。ああいう雑誌に載せつづければ、永遠にこのCD-ROMは売れつづけると思う。

大塚:えんえんと売れるね。一過性のものじゃないですから。

貞本:手塚治虫の「マンガの描き方」みたいに(笑)。

大塚:そうですね、ちょっと気恥ずかしいくらい大塚康生が売りモノにしてあるけれど。まぁ、いいでしょう(笑)。結局、ジープとアニメファンを一緒にターゲットに入れちゃって、成功していると思うんですよ。テレコムなんか、何人も「買うぞー」って。ジープはどうでもいいから、と(笑)。

大塚:もう、ぼちぼち時間じゃないですか。

貞本:そうですね。じゃあ(打ち上げに)行きましょうか。

大塚:行きましょう。(打ち上げ前にビールを)こんなに飲んじゃった、ヤバいわ。

ガイナックスでの雑談が終了したのは午後7時過ぎ。そのままCD-ROM画集打ち上げ会場に場所を移し、熱いトークはまだまだ続く・・。
大塚康生先生のジープCD-ROM画集「OHTSUKA YASUO MILITARY 4×4 GRAFFITI」は現在好評発売中!ご覧いただけるとうれしいです (^^)


[HOME] [BACK]